本研究は、国際移住家事労働者が移住先の国で社会運動に参加した経験が、帰国後の本人の生活や価値観を含めたライフコース選択に与える影響について考察した。とくに、香港にて移住家事労働者として働きながら社会運動グループに参加した経験をもつインドネシア人女性OBを取り上げて、合計約100名に対して質問票を使用した半構造化インタビューによる聴き取り調査を行い、香港での社会運動への参加がどのような経験として回答者に認識されているか、女性家事労働者自身の言葉を通しての理解を試みた。これにより本研究、移住家事労働者が社会運動に参加することの意義を包括的に評価し、スキル向上等のエンパワーメントの手段としての社会運動参加の有効性と、有益な運動参加サポート体制のあり方を検討した。 調査の流れとしては、平成28年度上半期に資料収集、下半期と29年度上半期に予備調査と聴き取り調査を実施し、同年度下半期にはデータ分析を行った上で、30年度には主に論文作成や発表などの成果発表を行った。 研究成果としては、『インドネシア 言語と文化』に論文を出版し、『インドネシア・ニュースレター』にて研究ノートを寄稿したほか、『南方文化』に書評を発表した。このほかにも、2016年から2018年までの毎年、日本社会学会の研究大会にて本研究の研究経過の報告発表を行った。また、2017年には、インドネシア共和国のガジャ・マダ大学にて招待講座を担当し、本研究の成果を織り交ぜたかたちで講演を行い、インドネシア語での発信を試みた。現在は、本研究の成果を英語論文にして投稿しており、最終査読中である。
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