研究課題/領域番号 |
16K04133
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
川島 理恵 関西医科大学, 医学部, 研究員 (00706822)
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研究分担者 |
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 講師 (20411506)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療社会学 / ヘルス・コミュニケーション / 会話分析 |
研究実績の概要 |
今年度は、特に総合診療部の診察場面データにおける意思決定過程について研究を進めた.これまで研究を進めてきた不妊治療や救急医療など極めてセンシティブな内容における意思決定過程と総合診療部のものを比較し、患者が納得して治療を受けるためには医師はどのように提案をすべきかを検討した.また救急医療を含めた患者・家族対応に関して行った分析は、国際学術雑誌であるDiscourse Studies, 21(2), 159-179.において‘‘Mitori’; Practices at a Japanese Hospital: Interactional analysis of the processes of death and dying in Japan’ (2019) として掲載された.また平成30年度8月より11月までケルン大学において在外研究を行った.ケルン大学では資料収集のみならず、Michaela Pellican教授と密に連携しながら研究内容や議論構築について助言を受けた.今後国際比較を展開していく上でも非常に有益な研究環境で発展的な議論を行うことができ、研究計画上明らかな進展があった.研究結果の一部は、来年度6月にInternational Pragmatic Conferenceにおいて口頭発表として採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由としては2つの点があげられる.まず1点目は、データ収集が順調に進み分析対象とするケース数も初診・再診を含めると200を超えたことで、分析の幅を広げてデータ検討を行うことが可能となった.これにより様々な症例において、それぞれの意思決定過程の比較検討を行うことができた.特に症例の緊急性や深刻さなどを考慮しつつ、医師が患者に行う質問のデザインに着目して研究を行った.この成果は、2018年7月に行われたInternational Conference for Conversation Analysisにおいて発表を行った. 次にデータ蓄積が可能になったため、不妊治療や救急医療などこれまでの研究分野との比較検討がさらに充実できた.特に患者や家族にとって受け入れがたいような提案を行わなければならない際に、短い時間で信頼関係をどのように構築し、相互に納得し合う形で話を進めていくのかについて検討を行った.これによりいくつかの相互行為上のリソースが重要であることがわかった.これはケルン大学での在外研究中に、様々なバックグラウンドをもつ研究者と交流し、分析について意見をいただいたことで可能となった.研究上、非常に重要な進展であった.
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今後の研究の推進方策 |
来年度の展望としては、主に2つに注力したい.まず医療分野を横断した形での意思決定過程の分析をさらに展開する.救急医療、不妊治療、総合診療の3つの分野においてそれぞれ共通の課題である意思決定過程における説明と納得をえる方法についてさらに具体的な検討を行う.2019年6月にはInternational Conference of Pragmaticsについて分析結果を発表し、その後同学術論文に投稿を行う.
次にさらに今後総合診療における意思決定過程の特徴について分析を進める.これまでの分析で総合診療部での意思決定過程において、提案として受け入れがたいケースが存在することがわかった.多くは他科への紹介となるケースが多いが、心療内科や精神科と行った科への転科の場合、患者から抵抗と思われる反応が見られるケースがあった.これらについてさらに分析を深め、身体症状と精神疾患の関係性をどう位置付け、患者が納得する形で転科を勧めることができるのか提案のデザインについて分析を行う.
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