本研究は軽度障害女性の意味世界から障害とジェンダーを考察するものである。 最終となった本年も松江市、米子市、東京でインタビュー調査を続けた。いずれも軽度障害者である。9人と量的には多いと言えないが、今年は女性のみでなく対比資料としても可能な男性障害者も含まれている。結婚をしたものの義理の父から激しい差別を受けて追い出され、いまだに深い傷に悩む人。障害がありつつも、だからこそ女性役割にこだわる人等々。従来の障害研究から漏れていた女性たちの生きづらさ、女性であり、障害があるという交差のなかで動きがとれなくなっていく生きづらさが明確になってきつつある。また軽度障害者であってかつ部落出身者である60代の女性に計4時間に及ぶインタビュー調査も行えた。充分と言えないまでも質的には厚みのある資料が残ったと考えている。この調査結果は来年執筆予定の査読論文等に活かしていくつもりである。 若干出版が遅れているが、谷富夫先生著作編集の『社会再構築の挑戦』に共著者として論文「障害女性の生きづらさについての一考」の執筆も本年の成果である。研究会にも多く参加し、本研究の考察に参考になった。京阪奈社会学研究会では医療社会学や障害学に関する最新の情報を得ることができた。また所属する社会理論・動態研究所でのポストコロニアル読書研究会では『ぼくにだってできるさ』を読み、9月、2月に報告を行った。 12月には障害界隈ではよく知られている「障害者のリアル」講座の講師として東京大学で講演を行った。「軽度障害者」の生きづらさについてはほとんどの学生が気づいてこなかったとして新鮮に受け止められたようだった。同じ12月に鳥取県大山町で「差別解消条例制定を考える」シンポジウムに登壇するなど、本研究の成果を多少なりとも社会に還元できている。今後も引き続き研究に励みたい。
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