本研究の目的は,長野県松本市の行政区(地区)を主な参与観察の対象として,地域社会が担いうる「互助関係」を明らかにし,地域資源を活用しながら高齢者等の生活支援を行なう仕組みを育成する方法のモデル化を試みるものである。本研究では,いくつかの地区への支援(アドバイス等)を試みながら,当事者らと共にモデル構築のための言語化作業を行うものである。 2016年度は,研究者・専門職・地域住民代表が地域支援グループを組織し,関係者の語りを手掛かりに地域課題の整理を行った。2017年度は,互助関係の構築のためには身近なところで集まれる「場づくり」が重要であることを確認し,Jo地区に「カフェ」を立ち上げた。このプロセスで互助関係を地域で作り出すためには,専門職を交えた人材育成のためのプラットフォームが必要であることがわかった。2018年度は,Jo地区には活動の継続と人材育成を視野に入れた「世代間交流」を取り入れながら,互助関係の構築と世代間継承のあり方を考えた。Sg地区は既存のプラットフォームを活かしながら,より身近なところで互助関係の維持を考える作業を進めた。 研究の最終年にあたる2019年度は,Jo地区での取り組みを整理し,地域社会が無理なく互助関係を構築するための条件を探った。また,サロン運営を当初の地域支援グループから新しい人材に移行する試みを行った。Sg地区では,地域課題を「我がこと」として考える組織づくりを計画し,エリアに分けて介入作業を行った。比較視点を得るために,長野市・上田市・上松町などの調査を計画したが,2019年10月の台風19号と2020年2月以降のCOVID-19感染症対策のために調査等を終えることができなかった。 松本市の最終調査はCOVID-19のため断念せざるを得なかったが,フォローアップとモデル化作業については,今後も介入と研究を継続して続けていく予定である。
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