本研究は、生活困難を有する母子家庭支援を行う「母子生活支援施設」における施設外支援(アウトケア)の現況と課題を分析するものである。母子生活支援施設は、ドメスティック・バイオレンス(以下「DV」とする)等により生活困難にある母子家庭に対し、生活支援および就労支援を行う社会的意義の高い施設である。だがそのあり方について、学術的にいまだ詳細な分析がされていない。 平成28年度の研究において、母子生活支援施設の具体的状況を把握するために、その関連法である母子父子寡婦福祉法の成立過程と改正経過を詳細に分析する必要性がある点に気づき、平成29年度はその作業を行った。また特別措置法から恒久立法となった、母子父子寡婦就業支援特別措置法についても同様に成立過程と改正経過を詳細に分析した。 その結果、さらに母子家庭における法政策のありかたと家族政策における家族モデルの関係性について深化する必要に至り、本年度は主にその点に対する検討を深める点に力点を置いた。その際に、母子父子寡婦福祉法の中でも、母子生活支援施設(以前は「母子寮」とされている)の施設の性格と専門性について議論されているものの、その点について現在でも同様の課題を引き継いでいるという点が明らかになった。 さらに、当該年度後半においては、母子生活支援施設の状況を把握するために、一次資料を用いながら、全国の母子生活支援施設の概況をまとめる作業を行った。
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