研究課題/領域番号 |
16K04142
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 亜紀子 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40442438)
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研究分担者 |
根來 秀樹 奈良教育大学, 教職開発講座, 教授 (80336867)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会的ケア / 発達障害児 / 家族支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害児の家族支援システム構築へ向けた研究の一部であり、発達障害児の家族の「社会的ケア」を検証することを目的としている。研究課題としては、第1にケア供給に関わる政策の明確化、第2にケア供給に関わる地域構造の明確化、第3にケア供給に関する家族の選択構造の明確化、を設定した。また日本の比較対象として、家族支援先進国であるイギリスを選定し、日英両国の「社会的ケア」について重層的に検討することとしている。 平成29年度は、(1)家族ケアに関する理論的検討を行い、(2)家族のケア供給実態について前年度に引き続き都城市における調査、分析を実施した。 (1)については、日本における障害児の母親に関する代表的研究において、ケアを行う母親がどのように分析されているかレビューした。その結果、母親たちは、近代家族における母親役割としてケアや世話を行っていること、また母親が障害児の福祉的主体として位置づけられており、母親のケアを前提に障害児の生活が成立している枠組みがあることが明らかになった。一方、これまでに生活構造論的分析はなく、この視点から母親の実態を明らかにする必要性が示された。この分析結果は九州大学人間環境学研究院・人間科学部門共生社会学講座『人間科学共生社会学』第8号(2018年2月発行)に論文として掲載した。 (2)については、地域における保護者向けサービスの実態について前年度に引き続き宮崎県都城市で調査を実施した。またあわせて社会的ケアとして親の会が果たしている役割についても分析、検討を行い、障害児家族メンバーに生起する多様なニーズを充足する支援機能などがあることを示した。これについては、11月の日本社会学会において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、発達障害児の家族支援システム構築へ向けた研究の一部であり、発達障害児の家族の「社会的ケア」を検証することを目的としている。平成28年度で実施した、家族支援先進国のイギリスでのケア供給についての調査、国内地域におけるケア供給に関する調査に引き続き、平成29年度はケア供給に関する分析を異なる観点から行い、さらに理論的検討も実施した。ケア供給に関してより重層的な観点から分析でき、研究をさらに進めることができた。また理論的検討に関しては本研究の研究意義について改めて検討することができ、論文としてまとめることができた。 以上の経過により平成29年度においても、研究は概ね順調に進捗したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、発達障害児の家族の「社会的ケア」の実態を検証することであり、初年度である平成28年度は、家族の選択構造の量的分析のまとめ、イギリスにおけるケア供給実態についての調査、日本の地域ケア供給に関わる調査を2地域で実施した。2年目となる平成29年度は、新たに家族ケアに関する理論的検討に取り組み、また家族のケア供給実態についての国内の調査分析を引き続き行った。 今後は地域のケア供給実態についての調査を国内において継続して実施し、さらに分析を行う予定である。さらにケア供給に関わる家族の選択構造についての調査を国内とイギリスにおいて行う。これらは研究分担者(根來秀樹・奈良教育大学)との連携、協力によって進めることとしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初、平成29年度計画では、実施した調査分析を共同で行う予定としており複数の研究会を予定していた。しかし、研究会実施が予定より少なく、次年度以降に行うこととなったため、未使用額が生じた。 (使用計画)研究会の開催を複数回予定している。未使用額については、その経費にあてることとしたい。
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