本研究は、発達障害児の家族支援システム構築へ向けた研究の一部であり、発達障害児の家族の「社会的ケア」を検証することを目的としている。研究課題は以下の3点を設定した。第1にマクロレベルとしてケア供給に関わる政策の明確化、第2にメゾレベルとしてケア供給に関わる地域構造の明確化、第3にミクロレベルとしてケア供給に関する家族の選択構造の明確化の3点である。また日本の比較対象として、家族支援先進国であるイギリスを選定し、日英両国の「社会的ケア」について重層的に検討することとした。 最終年度の2019年度は、(1)家族に対するケア供給実態についての調査・分析、(2)地域における専門機関サービスについての分析、(3)発達障害児の家族のQOL調査を行った。 (1)については、宮崎県都城市で継続的に実施している母親のグループインタビュー調査を行い、あわせて親の会の代表やリーダー層に対する調査を実施した。この分析結果については、ほかの調査結果の分析もあわせて、2020年度に論文としてまとめ投稿予定である。 (2)については、これまでに奈良市、宮崎県で行った専門機関に対する調査の分析を行った。分析結果は、2019年10月に開催された日本社会学会において口頭発表した。また九州大学人間環境学研究院・人間科学部門共生社会学講座『人間科学共生社会学』第10号(2020年5月発行)に論文として掲載予定である。 (3)については、発達障害児の母親に対する社会的ケアの状況による影響を検討するため、QOLに関する調査に着手した。これについては、まだ調査途中であり、引き続き2020年度以降も実施する予定である。
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