研究課題/領域番号 |
16K04145
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
梅崎 薫 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (50320891)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 家族間暴力 / 予防 / 修復的正義 / 対話 / 社会的孤立 / 地域 / アセスメント |
研究実績の概要 |
日本におけるRJ対話、特に学校のいじめ予防や啓発で世界的に実践されている対話モデルを日本の高齢者デイサービス版に開発して、実践研究を続けてきた。通所する高齢者がこの対話のルールに慣れることができるか、参加することができるか、家族などプライベイトな話をデイサービスセンターのスタッフ等に話すことを促せるかについて、手順および対話の担い手の質を均等にして、複数個所のデイサービスセンターで検証した。その結果、通所する高齢者は、このRJ対話のルールに慣れることができ、参加でき、家族などプライベイトな話をデイサービスセンターのスタッフ等に話すことを促せるという評価に至った。通所高齢者だけでなく、職員においても通所高齢者とともに対話に参加することで、高齢者への個別化が促され、その結果高齢者に自発的な敬意がわきやすく、しかもその敬意は維持しやすいことが示唆された。 さらに認知木野の低下した高齢者の方が、この対話に参加することを好む傾向があり、対話に参加することで精神的な安定が図れる可能性も示唆された。この仮説は、実施個所を増やしてさらに検証する必要があるものの高齢者虐待を予防する対話として可能性をさらに開くと思われる。この成果を国際被害者学会(香港、2018年6月)で報告する。 加えてカナダでのRJ対話実践のほかにフィンランドでもRJ対話が実施されていることがわかり、RJ対話の適用に関するアセスメントについて二つの国における情報収集ができる見通しとなった。日本における適用基準を、カナダ(インタビュー調査終了)に加え、フィンランドについては情報収集を試みる。訪問日程は決まったので今後は研究計画を変更し、フィンランドでもインタビュー調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本での高齢者デイ版RJ対話の実践について仮説を設定して、それを検証した。その成果を国際被害者学会で報告する。また、この検証結果から新たな仮説も生成された。 カナダで用いられている高齢者虐待に関する潜在的リスクアセスメント尺度を用いた、RJ対話適用ケースに関する調査は、日本側に関してA市の協力で実施することができた。カナダでRJ対話を実施しているNGOの協力により、日本とカナダのセスメント結果を比較検討するために、カナダのアセスメント結果の回答を待っているところである。回答が得られ次第、論文化する。 加えてRJ対話と大変良く似たフィンランドの対話(アンティシペーションダイアローグ:AD)についても同様に調べていたところ、RJ対話と関連があり、フィンランドではRJ対話だけでなくADという2つの対話が用いられて、高齢者虐待への対応と予防がなされていることが分かった。そこで本研究ではフィンランドでのRJ対話適用についても国立研究所を訪問し、可能ならば調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
カナダNGOの回答を待って、論文化する。またフィンランドでのRJ対話の実施とその提要、またアンティシペーションダイアローグ:ADの対話についてもフィンランドを帆門して、RJ対話とAD対話の適用について調査する。高齢者虐待を担当している国立研究所のソーシャルワーカーらと訪問日時について了解を得た。
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次年度使用額が生じた理由 |
カナダの研究協力者への支払いが、2018年度に繰り延べされたため
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