日本における家族間暴力、高齢者虐待を予防するために、カナダでの予防をモデルに、日本での実施方法を探った。修復的正義の哲学に基づく、対話での高齢者虐待予防の地域づくりである。カナダで用いられているサークルというモデルの修復的対話を、日本の高齢者とともに対話できるよう開発し、実際に定期的に実践、複数個所での試行を含めて見直し、実施マニュアルとして整え、出版した。 さらに認知機能の低下した高齢者の方が、この対話への参加を希望し、一時的ではあるが精神的な安定をとり戻すことがあることを、複数個所に実施から確かめたので、国際学会にて報告した。 カナダやフィンランドなどでは、家族間暴力や虐待予防を葛藤関係が先鋭化するずっと前の、ささやかないざこざ段階で対話することにより予防していることを現地でのヒアリングにより明らかにした。日本での高齢者虐待予防は、通報後の虐待認定後に行われる介入を指すことが多いが、カナダやフィンランドでの予防は、通報が生じる前の段階での介入であった。 以上を踏まえて、日本における高齢者虐待のグレイゾーンアセスメントを行うために、日本のA市に協力の下、地域包括支援センター担当職員に、過去1難関の通報ケースと担当者が虐待のリスクはないと主観的に安心しているケースを抽出してもらい、カナダで用いられている潜在的高齢者虐待リスク・スクリーン(IOA)を援用してIOA得点を求めた。その結果、回収率およびケース数に限界はあるものの、IOA得点から日本のグレイゾーン得点を特定することができた。
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