研究課題/領域番号 |
16K04146
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
金木 ちひろ (河村ちひろ) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00290065)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | てんかん / 患者 / 当事者 / セルフマネジメント / 治療 / ソーシャルワーク / リカバリ |
研究実績の概要 |
本研究は患者が状況を正しく理解し治療や生活に対処していくことを「セルフマネジメント(self management)」という概念を用いてとらえ、てんかん発作のある人(以下、PWE)が疾患と障害に対処し生活を送るうえでどのような課題に直面しているのか、どのような支援を必要としているのか、支援者の課題は何かについて探っていくことを目的とする。平成30年度においては、PWEのうち、成人に対する面接調査を行った。本人の語りから得られる課題や困難を以下のように整理することができた。 (1) 病気に伴う心身の変化および治療に関連する事項(発作の予測が困難なこと、発作に伴う心身の状態、発作以外の身体症状・認知機能の障害、薬に関すること) (2)日常生活・社会生活への影響(他者への告知・開示、身近な人間関係、社会的な人間関係、普通の生活(行動・行事への参加)、自立または自律、教育・資格、運転免許等の資格、職業・仕事、経済的困難) (3)心理面への影響(重荷・負担感、コントロールを失う感覚、感情・情緒、自分は他者と「異なる」という思い、自尊心、内なるバリア、将来) (4)本人の外側にある問題(外からもたらされるバリア、スティグマ) てんかんという疾患では発作がその主な症状であり、てんかんのセルフマネジメントでは発作の治療や対処がPWE共通の課題となるが、発作と直接的にまたは間接的に関係するその他の心身の状態や症状に関する課題が本人にとっては大きいことがわかった。今後のセルフマネジプログラムのあり方としてそのあたりへの対応を組み込んでいくことの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた調査実施がほぼ終了した。 ただし、当事者が発作以外の心身の状態や認知機能障害にどのように対処しているかについての質問を加えた調査を行うことが必要と思われたので当初計画の一年間延長を申請し承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行ったてんかんのセルフマネジメントに関する質的調査を精緻化するために、発作以外に当事者が訴える認知機能障害(知的障害とは認定されない軽度の状態)のマネジメントについて語りを得るための追加調査を行う。さらに、セルフマネジメントプログラム実施の計画・実施・効果測定を行う研究段階に進むこととし、次年度の予定は以下のとおりである。 1.フォーカスグループ(以下FG)を対象とした調査について倫理申請および内外の先行研究(発作以外の障害に対応しているプログラム研究の検討。 2.FGミーティング開催。各5名前後の参加者をつのり、3種類の当事者によるミーティングで経験を共有し、プログラムの有り方についての意見を聴く。(①てんかん発作のみの当事者。②てんかん発作がまだ十分に抑制されずかつ発作以外に軽微な認知障害の低下等の関連障害がある当事者(以下、プラス群と称する)。③プラス群の当事者の親。 3.FGミーティングのまとめと分析。2020年度実施予定のプログラム立案、講師依頼、教材開発(専門医による医学的監修を受ける)、会場予約などの準備。プログラムの広報(チラシの作成と病院・施設・当事者団体への周知)。プログラム参加者を対象とした質問紙調査の立案と倫理委員会申請。
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次年度使用額が生じた理由 |
当事者が発作以外の心身の状態や認知機能障害にどのように対処しているかについての質問を加えた調査を行うことの必要が生じた。その調査費用および学会発表旅費に支弁する予定である。
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