研究課題/領域番号 |
16K04147
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
和気 純子 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (80239300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者福祉 / ソーシャルワーク / 地域包括ケア / 社会的排除 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的孤立や排除に陥る高齢者等を含めた地域包括ケアの構築におけるソーシャルワーク実践の方法論を考究することを目的としている。研究初年度にあたる平成28年度は、国内外の研究および制度・政策的変遷のレビューを実施し、拙著「介護支援のソーシャルワーク-支援困難ケースからみる地域ケア会議の意義と地域包括ケアシステム-」が雑誌『ソーシャルワーク研究』(N0.42-4)に掲載された。また、福祉の市場化が進む日本および韓国の高齢者ケア領域の実践状況を事業者の視点から評価した比較研究の成果を世界合同ソーシャルワーク会議(ソウル、6月)において報告するとともに、同会議において国際老年学会が主催する認知症政策・実践の国際シンポジウムに招聘され、英国、アメリカ、カナダ、韓国の研究者らととともに当該テーマについて議論した。 本研究は、理論研究、実証研究に加えてアクションリサーチの手法を導入することを特色とするが、初年度である本年は、4月より大学所在地である八王子市高齢者福祉課、社会福祉協議会、市民活動協議会、生活支援コーディネーター、民生委員、学生、院生らとともに毎月地域ケア会議を開催し、7月には八王子市と首都大学東京の包括連携協定の締結に参与した。そのうえで、11月から学内において誰でも自由に参加できるコミュニティ・カフェを毎月1回開催し、地域と大学の連携・協働による地域包括ケアの在り方を追究している。11月には、大学関係者や地域住民を対象に地域包括ケア構築にむけたシンポジウムを学内において開催し、地域への啓発活動に参与した。さらに2月にはカフェ参加高齢者50名への評価調査を実施し、PDCAサイクルにもとづきながら地域ケア会議(コア会議)においてさらなる地域包括ケアシステム構築にむけた実践課題を模索している。また、参加する専門職への個別のヒアリング調査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に予定していた研究および実践のレビューを実施し、専門誌に論文が掲載された。また、地域包括ケアの構築に関する研究や実践を国内外の学会やシンポジウムで報告した。さらに、アクションリサーチの準備作業をへて、11月から大学におけるコミュニティ・カフェを開設するなど、地域包括ケア構築にむけた実践の場を構築することができた点で、3年間の研究の基礎的作業は終えることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、レビュー論文の執筆とアクション・リサーチの準備作業に多くの時間を費やしたが、今後は、関係者へのヒアリング調査結果をまとめながら、地域ケア会議にフィードバックする相互作用を積み重ねるとともに、コミュニティ・カフェの効果評価、利用者のニーズを把握し、ソーシャルワークの実践方法を開発するための専門職への数量的研究を実施・分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソウルで開催された合同国際ソーシャルワーク会議に参加したが、当初予定していた学会発表に加えて、当該会議で開催される国際シンポジウムにも招聘され、交通費および会議参加費が主催者である韓国側事務局より支給されたため、その分の予算が不要になった。 さらに、専門職へのヒアリング調査に着手したが、その件数がまだ予定に達しておらず、その分の謝礼(専門的知識の提供)が支払われていない。
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次年度使用額の使用計画 |
年度初めから専門職へのヒアリング調査を精力的に実施する。また、9月に中国・深センで開催されるアジア太平洋地域合同国際ソーシャルワークにも参加し、発表を予定している。
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