研究課題/領域番号 |
16K04147
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
和気 純子 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (80239300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / 社会的包摂 / ソーシャルワーク / 実践研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的孤立や排除に陥りやすい高齢者らを包摂する地域包括ケアシステムの構築にむけたソーシャルワーク実践のあり方を理論的、実証的に考究・検証することを目的にしている。実施2年目にあたる本年度は、老年社会科学会学会誌『老年社会科学』において、編集委員である申請者が「地域包括ケアシステムの構築と深化:課題と展望」と題する特集を企画し、申請者自身も拙著「地域包括ケアシステムから地域共生社会へ:地域づくりの方法と課題」において、介護保険制度では問題の解決に至らない困難ケースへの対応をとりあげながら、地域包括ケアシステムから「地域共生社会」の構築可能性と構築にむけたソーシャルワーク方法論について理論的整理を行った。 また、実証研究としては、地域包括ケア構築に重要な役割を果たす民生委員の活動状況の実態を把握するために、東京都板橋区の全民生委員(N=532)を対象とするアンケート調査を9月に実施し、360件の回答を得た。現在、調査結果の概要をとりまとめた段階であるが、5因子構造が判明した訪問活動における負担感は(確証的因子分析)、年齢や経験年数、民生委員自身の世帯構成の影響をうけるとともに、引き受けた動機がバーンアウトを増幅させていることが判明した。また、八王子市の全ての地域包括支援センター専門職を対象(N=150)とするアンケート調査も実施し、地域包括ケア構築をめぐる専門職の取り組みの異同について現在分析中である。 さらに昨年より着手している大学を拠点とする多世代交流コミュニティ・カフェの取り組みを継続し、アクション・リサーチを行いながらプログラム開発と定期的な効果評価を実施した。これらの概要について、八王子市の研究誌『まちづくり研究はちおうじ』に実践状況に関する論考を共同実践者らと投稿し、2018年4月に刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目にあたる2017年度は地域包括ケアから地域共生社会への深化をめぐる理論的整理を論考として発表したほか、地域包括ケア構築のカギを握る民生委員および地域包括支援センター専門職へのアンケート調査を実施することができた。また、引き続き大学を拠点とする多世代交流型コミュニティカフェを実施・運営し、アクションリサーチによるプログラム開発と効果評価に継続的に取り組むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2018年度は、生活支援コーディネーターをはじめとするキーパーソンへのヒアリング調査を実施するとともに、2017年度に実施した調査の分析を行い、論考に整理し公表する。ヒアリング調査の結果をふまながら、複数の質的、量的調査を総合し、地域包括ケア構築にむけたソーシャルワーク実践のあり方の体系化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国内の現地調査が相手方との都合が折り合わず、日程調整できなかったことから、費用が余ることになった。平成30年度は早めに国内現地調査を実施できるよう日程調整したい。
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