本研究は、社会的孤立や排除に陥りやすい高齢者らを包摂する地域包括ケアシステムの構築にむけたソーシャルワーク実践のあり方を、理論的、実証的に考究・検証することを目的としている。 本年度は、平成29年に実施した民生委員の活動調査の分析行い(有効回答数360)、日本社会福祉学会第66回秋季大会において報告した。地域包括ケア構築の最前線において、一人暮らし高齢者や様々な孤立状況にある人々と地域、行政をつなぐ役割を果たす民生委員は、近年の孤立型社会において負担感が増大していることが懸念されているが、本研究から、訪問活動の負担感は5因子構造であり(確証的因子分析)、年齢や経験年数、世帯構成、引き受けた動機が彼らのバーンアウトに影響を及ぼすことが判明した。 また、2018年2~3月に実施した東京都A市の地域包括支援センターの全専門職(150名、有効回答49%)を対象とする質問紙調査の結果を分析し、業務と意識の特性を明らかにした。全国に比べて3職種とも年齢の高いベテラン職員を配置しているA市では、3職種による差異は顕著ではなく、精神的健康は先行研究と比べると高くはないものの一般人口に比べれば高く、待遇面での満足度が低いことが判明した。本研究結果は、9月に東京で開催されたAging and Society 8th Interdisciplinary Conferenceにおいて報告したほか、「地域包括ケア構築を担う地域包括支援センター専門職の業務負担と意識」として、『人文学報』No.515-3(社会福祉学35)に論文として掲載した。 さらに社会的包摂を目指す社会正義と倫理にもとづくソーシャルワーク実践の国際動向について、第48回全国社会福祉教育セミナーで報告したほか、海外の第一線の研究者らを含めた国際ソーシャルワークセミナーをコーディネートした。
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