本研究では、精神疾患のある親と暮らす学齢期の子どもに対して、学校を拠点とした支援の在り方についてモデルを提示することを目的としており、初年度は養護教諭を対象とした調査を実施した。平成30年度には初年度調査研究の成果を踏まえて養護教諭やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを対象としたワークショップを実施した。ワークショップ参加者への調査結果を踏まえて、学校を拠点とした支援モデルについて整理した。 学校を拠点とした支援を展開するためには、学校内で担任や養護教諭やスクールカウンセラーが、精神疾患のある親と暮らす子どもと話し合える関係を築き、子どもとの信頼関係を築くことが基盤となる(第1層)。加えて当事者である親との関係構築や、その他親族とも連絡できる関係を築くとともに、担任や養護教諭等が一人で対応を抱え込まないで済むように役割分担を決めるなど、校内連携体制を調整する(第2層)。精神疾患のある親及び子どもへの支援を学校だけで担当することはできないことから、地域の関連機関との連携が不可欠であるが、地域の実情に応じた福祉サービスの情報を得る上で、スクールソーシャルワーカーなど、地域の核となる人材との連携を図っていくことが望ましい(第3層)。3層構造を築きながら円滑に支援を進めるために必要なのが、「その場しのぎ」の対策を柔軟に続ける姿勢であり、関係者が相互に「対話」を積み重ねるための仕掛けや工夫が求められる。絵本などを使った研修方法が有用であることに加え、さらに「対話」のための場としての事例検討会や、多機関連携研修の方法論が必要とされていることが明らかとなった。最終年度には関係者間の「対話」を円滑に進めるために役立つ海外の資料の翻訳も行った。
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