【本研究の問題意識】本研究の申請の前年(2013年度)における障がい者雇用率は、企業全体で1.76%、雇用率達成企業は全体の42.7%であり、必ずしも良好な数値とは言えない。特に規模が小さい企業は、企業体力的な面から雇用を回避する傾向が見受けられる。しかしながら、規模が小さい企業の中には、法定雇用率が課されていないにもかかわらず障がい者を雇用していたり、法定雇用率を超えて雇用している事例が散見される。障がい者のパフォーマンスを引き出しており、経営にとっての意味を見出している一方で、障がい者側もやりがいを感じており、定着もよいことが多い。その背景には、企業や障がい者支援組織が地域ネットワークを形成し、企業を支える取り組みを展開していることを指摘できる。そこで、本研究では、企業支援を通じた就労支援の地域ネットワークが障がい者雇用の促進や障がい者の定着等に与える影響を明らかにする。 【本研究の方法】日本全国には、障がい者雇用にかかわって企業の取り組みを支援するネットワークが存在する。その中には、自らに団体名を付け、意識的な活動を展開しているネットワークがある。そのようなネットワークの主要メンバーに対してヒアリングを実施し、設立の経緯(問題意識)、実習や雇用、定着の実績、課題などを聞き取る。また、それらのネットワーク加盟企業やそれ以外の企業に対して、障がい者雇用をめぐる課題(相談内容)、連携している組織、連携強度、定着率、連携と障がいなどについてデータの提供を依頼し、ネットワーク型の連携の効果を実証的に明らかにする。 【研究結果】障がい者雇用をめぐる課題によって連携先に一定の傾向があること、障がい種別によって連携の強度に差があること、課題(相談内容)と障がいによって定着効果に差があること、地域連携が高い効果を持つのは、精神障がい者の職場不適応についてであることが明らかとなった。
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