ベトナムには社会復帰が困難となった元患者に住居を提供するハンセン病村という施設があり、ハンセン病村では元患者夫婦の子どもたちが誕生してきた。本研究はベトナム国内のあるハンセン病村に在住する元患者の子どもたちを対象とし、そのQOLについて子どもの包括的健康尺度であるKid-KINDLRベトナム語版を用い、身体的健康、精神的健康、自尊感情、家族、友だち、学校生活、QOL総得点の項目について測定した。この調査は当該ハンセン病村の管理主体である病院Aとの共同研究として行い、調査は2016年から2018年にかけて実施した。研究計画作成は病院Aと報告者が行い、病院Aの倫理審査による承認を受けて実施された。また、対照群として一般地域の子どものQOLを測定し、元患者の子ども58名、一般群の子ども47名からデータが得られた。データを分析した結果、一般群との比較では、身体的健康、友だち、QOL総得点の項目において元患者の子どもたちのスコアが有意に低かった。小学生では有意差がみられなかったが、中学生では身体的健康とQOL総得点、高校生では身体的健康と学校生活の項目において子どもたちのスコアが有意に低かった。特に、身体的健康については極端に低いスコアがみられ、身体的健康状態がすぐれない子どもの存在が明らかとなった。全体的な傾向として、元患者の子どもたちが小学生の段階では一般群との差は特にみられないものの、中学生の時期から低下がみられ、身体的健康、自尊感情、家族関係に配慮が必要な状況にあることが明らかとなった。一方、学業面(学校生活)では、一般群の場合小中高と低下していくのに対し、元患者の子どもの場合は一般群より有意に高いという結果となった。この結果を踏まえ、元患者の子どもたちへの学習サポートなどの導入により、子どもたちの学習意欲や進学への意欲促進につながることが期待できる。
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