研究課題/領域番号 |
16K04158
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
中根 成寿 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (40425038)
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研究分担者 |
山下 幸子 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (60364890)
岡部 耕典 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90460055)
鈴木 良 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90615056)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知的障害者 / 自立生活 / 地域生活 / 重度訪問介護 / パーソナルアシスタンス / 障害者総合支援法 / 脱施設 / ダイレクトペイメント |
研究実績の概要 |
2017年度は、研究分担者の岡部耕典(早稲田大学)を編者として、プロジェクト参加者全員が執筆した共著書『パーソナルアシスタンス―障害者権利条約時代の支援システムへ』(生活書院 305頁 2017年4月)を出版したことが最も大きな成果である。各人の研究成果は以下のとおりである。 中根は、障害者総合支援法の利用者人数の推移、サービスごとの利用率調査を行うことで、現在の障害者総合支援法が日中の通所を中心とした予算配分になっていることを「通所施設中心生活」として指摘した。 岡部は「重度訪問介護の対象拡大」と「パーソナルアシスタンス」をめぐる理念と現状及び課題の整理を実施した。2016年度に、4回の研究会を開催した。うち10月15日には公開研究会を行い、札幌市から自治体職員2名、自立生活センター職員2名を招き、札幌市のパーソナルアシスタンス制度の現状と課題について報告を踏まえて議論を行った。 山下は、パーソナルアシスタンス制度創設に向けた論点整理とともに、厚生労働省に設置の「『我が事・丸ごと』地域社会共生本部の議論等、障害福祉に関わる政策動向の検討を目的に研究を行った。これまでの山下による研究及び本年度の研究課題に取り組む中で、制度創設に向けた論点として、パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメントとの関係、パーソナルアシスタンスと重度訪問介護との相違、権利擁護、財源確保の課題という4つの論点を明らかにした。 鈴木は、海外の福祉先進国における障害者の個別化給付やパーソナルアシスタンスによる生活の質とコストについての研究論文を収集し、研究内容を障害種別ごとに整理した。また2017年2月6~17日にかけて、北欧の個別化給付/パーソナルアシスタンスの成果とコストに関わる情報を収集するため、現地の行政機関や事業所へのインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的な進捗状況は、概ね順調に推移している。各人の研究プロジェクトは研究会の開催によって定期的に共有されている。出版については編集作業の遅れから発行日は当初予定よりややずれ込んだが、質量ともに充実した論文集となった。 岡部が中心となって開催する研究会は、公開研究会の開催を含め予定どおり行うことができた。中根がすすめる障害者総合福祉法利用実態分析は、現状が通所施設中心の予算配分であることを明らかにし、家族によって担われている無償解除部分が家族の高齢化によって障害者の介護給付費が増加する可能性を指摘した。 山下の分担部分である、2016年度に審議会資料や関連文献の読解を元に論点整理を行えたことで、2017年度以降の研究課題として計画をたてていた「支援者の養成、研修に関する検討」に向け、研究課題を導き出すとともに研究計画の具体化を進めることができている。 鈴木の分担である、海外の文献研究の収集と整理については、主要な論文成果について概ね整理・分析が終了している。また鈴木が北欧においておこなう個別化給付/パーソナルアシスタンスの実態調査については、今回のスウェーデン国内の現地調査によって、調査対象機関及び調査対象者と今後のインタビュー調査の調整を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
中根は、「通所施設中心生活」の介護給付コストの試算を行い、親と同居する成人障害者の給付コストと、24時間の支援を受けて生活する自立生活の給付コストの比較を行う。これにより、家族による無償介護が有償化された場合の推移についての給付コストモデルを作成する。 岡部は、夏に知的障害者の自立生活支援において先駆的実践が行われている東京都多摩地区の自治体職員及び介護派遣事業所スタッフ等に対するインタビュー調査自治体調査を行う予定である。 また山下の調査により、パーソナルアシスタンス制度創設に向け議論すべき論点の一つに権利擁護の課題があることが明らかになった。2017年度に知的障害と身体障害を有する障害者の生活に関わるフィールドワーク調査を日本国内の複数個所で行い、支援状況-特に日常に根差した意思決定支援の現況、支援者養成と継続に向けた検討を行う。こうした研究により、支援者の養成方法や支援の専門性の内実の明確化を目指す。 鈴木は継続して、海外の文献研究の収集・整理・分析を行う予定である。また北欧の実態調査については、スウェーデンにおいて政府と司法によるパーソナルアシスタンス費抑制を正当化する主張に対して、運動体がどのような見解を示し、運動を展開させているのかを明らかにするためにインタビュー調査を行う。 各人の研究成果の共有のために、2017年度も研究会は、年4回開催(うち1回は公開研究会)を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
山下担当分において、特に人件費・謝金に当初の計画に対して未使用額が生じている。2016年度は調査先や調査内容を精査するための前段階の文献調査に傾注し、調査協力者への謝金等が多く発生しなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
山下は、2017年度は調査研究を行うため、2016年度未使用額と2017年度研究費は、かかる旅費や人件費・謝金に使用する。
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