精神障害者対象のホームヘルパー等養成講座を修了した人を対象に、資格取得前後の生活と就労経験に関するインタビューの結果を分析した。インタビュー協力者はは24名で、ホームヘルパー資格取得後に何らかの就労経験を持っていた。さらに、これまでの質問紙調査等の成果報告、および精神障害当事者の体験の語りをオープンに議論するために研究参加協力者と共に討論の場を設けた。 1)インタビューの分析結果から、精神障害の経験にまつわる「挫折体験」が様々刻印されていた。挫折からの立ち上がりのきっかけの一つにホームヘルパー養成講座が位置づけられていた。受講の動機は、「自分を変える・挑戦の試金石」となり、訪問介護に従事するというよりも、幅広い自己成長を目指した動機であった。また、次の進路や支援者らにつながるということが期待され、支援者の役割も重要な意味があった。学びの機会は、「学校という場」として機能し、生活の活性化、傾聴と自らの経験の語りが同じ障害をもつ仲間(受講者)で繰り広げられ、自分が認められる場になり、体験からの学びを得ていた。そして自己やソーシャルスキル、社会に対する気づきを得て、自身の深化および進化をもはかっていった。「目標や見通しが立つ・希望が持てる」という感覚は、学びを契機としたエンパワメントやリカバリーの構成要素であると考察した。就労や家族の介護など具体的に学びの成果を活かすことができ、社会貢献と自己実現を達成できていた。 2)当事者との討論のなかで、ホームヘルパー養成講座の修了経験は、1)の成果からリカバリーの契機ととらえた。精神疾患の発症が「一度死んだ」体験で、そこから資格取得とその後の経験が生き返ったリボーンの感覚である、という意見の一致により、「リボーン」と題したシンポジウムを開催した。生活や就労を通して障害と自己の関係を捉え直しされていたことが明らかになった。
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