研究課題/領域番号 |
16K04161
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
児島 亜紀子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (40298401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 女性支援 / 支援者 / 抑圧 / フェミニスト・アプローチ / ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、女性支援の現場において、「女性特有の困難」が利用者にどのように現象し、さらにその困難と他の抑圧要素がいかに結びつき、利用者の生きがたさを形成しているのかを「支援者が」どう認識しているのかに着眼している。今年は昨年度以上に海外文献の読み込みを進め、ソーシャルワークのフェミニスト・アプローチの基本的枠組みがかなり変容したことを確認した。先行研究からは、「女性という特殊性」に焦点づけるアプローチが後景に退き、ポストモダンな批判アプローチや、反ー抑圧実践が主流化しつつあることが明らかになった。このことを踏まえ、今年は3名の支援者にプレ・インタビューを行ったほか、以前実施したインタビューを振り返り、支援者が「女性特有の困難」をどう捉えているのかを考察した。その結果、女性支援の現場であっても、「ジェンダー」、「フェミニズム」、「抑圧」、「解放」といった概念に親しんでいる支援者が多いとは必ずしもいえない状況が浮かび上がった。しかし、このことはわが国の女性支援現場が「モダンなフェミニスト・アプローチ(女性中心実践)からポストモダンな批判アプローチにシフトした」ことを意味しない。ジェンダー規範の非対称性や性別役割に批判的な支援者でも、「母性剥奪」論を無批判に援用した語りが見られるなど、そもそもフェミニスト・アプローチが浸透していない状況がうかがえた。一方で、フェミニストの支援者もおり、彼女らは利用者の置かれた困難が社会的・政治的な構造に起因するものとして把握している。利用者のおかれた状況において、支援者はジェンダーに起因する困難と、それ以外の抑圧要因をどのように関連づけて支援計画を策定しているのか、現行制度に内在しているジェンダー秩序を支援者たちはどのように捉えているのか、今後彼女らに対してより丁寧な聞き取りをしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は研究遂行上支障となる不測の事態が生じ、予定通りインタビュー協力者を募り、研究倫理委員会の審査を受けてインタビューを実施することがかなわなくなり、結局3名にプレ・インタビューをするにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は海外文献の渉猟・吟味に力を入れることができたため、今年はそれを踏まえて分析枠組みをより精緻化する。昨年度のプレ・インタビューの結果見えてきたこと、すなわちわが国の女性支援現場においてフェミニスト・アプローチの影響は限定的であり、実践理論としての摂取も道半ばであることを踏まえて質問項目を吟味し、早めにインタビューを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた洋書が3月中に書店に届かなかったため。次年度はそのようなことがないよう、余裕を持って発注し、確実に執行したい。
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