本研究は、家族介護者の介護離職(介護を理由とした離職)の予防に向けた社会的サポート・システムの構築に関する資料を得ることをねらいに、家族介護者の介護離職(またはその意向)と介護生活の実態についての基本的特徴を明らかにし、併せて、家族介護者の介護離職(介護を理由とした離職意向等)の促進・阻害要因を明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、当初の予定通り、平成29年度までに実施した調査(主に質問紙調査)を整理・分析し、その成果について取りまとめた。また、この取りまとめの過程において得られた知見のうち、家族介護者の離職意向(介護を理由とした離職意向、介護以外の理由による離職意向)とその関連要因(仕事要求、介護要求、仕事と介護の役割間葛藤等)については、研究論文としてその成果を発表した。具体的には、仕事要求(量的労働負荷)および介護要求(介護期間、1日あたりの介護時間)が複数役割の両立に伴う時間の欠乏に対する葛藤である「介護・仕事-私生活葛藤」と関連し、「介護・仕事- 私生活葛藤」が「介護を理由とした離職意向」と統計学的に有意な関連を示すことが明らかとなった。このほかにも、本研究課題を通じて得られた知見は今後も研究論文等として成果を社会に還元していく予定である。なお、研究成果のうちデータの全体的な傾向については報告書として取りまとめ、研究協力機関等へその結果をフィードバックした。また、研究期間全体を通じて得られた研究成果を取りまとめたうえで、家族介護者の介護離職の予防に向けた職場環境や私生活への配慮等に関する提案を整理した。
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