研究課題/領域番号 |
16K04165
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
大下 由美 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (00382367)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 期待論 / 差異生成論 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、理論的研究と臨床実践研究の2本柱で進められた。理論的研究においては、問題の変容論を構成する基本的な要素が、従来の意味構成と行為選択の2要素から、メッセージの意味構成、行為選択そして期待という3要素に設定しなおした。この期待の概念は、他者の行為に対し行為者によって構成される、行為者の次の行為の拘束力として作用する。この拘束力を衰退させる介入は、新しい規則を生成する力の活性化に貢献することを明らかにした。 また、この意味構成、行為選択および期待という3要素を設定することで、差異化の技法論が洗練された。これまでの差異化の質問法は、意味構成と行為選択の要素を記述させるトラッキングと記述した要素の差異化を試みる質問法であった。期待の概念を導入したことで、トラッキングの要素および差異化の質問において、期待についての質問を、循環的質問法を軸に類型化し、面接データを用いその使用例を論じ、国内の学術誌に投稿した。 さらに臨床実践研究においては、新しい理論的枠組みに基づく研究協力施設での実践研究を継続し、地域包括支援センターでの実践においては、身体的苦痛の訴えを軸にしたクライアントの問題ストーリーを、期待を軸に差異化を試みる地域での多職種チームによって、変容することができた。現在この臨床研究の成果は、論文として執筆中である。 最後に、国外の研究協力機関であるミシガン大学の研究者との共同研究における成果は、国際学術雑誌(2雑誌)へ投稿する準備が進められている。1つは、廣松の四肢構造のモノ軸を中心に、記述と記述のリフレクションを通して問題解決を行った過程を考察した論文として、もう一つは、他者からの期待の拘束力への介入を軸にした問題解決過程を理論的に考察した論文としてまとめられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際共同研究の成果は、ミシガン大学の教授との共同執筆論文として推敲を重ねることができた。現在は、投稿前の最終段階に来ているため。また国内の研究においては、期待概念を含めたネットワークモデルの理論的枠組みに関する議論と事例検討が進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果を踏まえ、理論的な研究においては、意味構成、行為選択、期待の3要素を軸にした、変容論および技法論の洗練化の研究を進める。今年度は、3つの要素を軸に、質問法の類型化を試みた。これらを用い、3つの要素を記述させていく質問法、および差異化を意図した質問法の連続的使用法についての研究に取り組む。その成果は、単著で出版する計画である。 また、国内外での臨床実践研究は、継続して行う。国内においては、地域包括支援センターを中心とした実践研究を強化し、研究成果を学術誌へ投稿する準備を進める。国外においては、2018年2月―3月の期間で、海外協力研究機関(米国ミシガン大学)へ赴き、臨床施設での共同研究を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初のカナダの臨床機関での共同研究の計画が、受け入れ機関の都合で実施できなくなったため、必要な研究経費に差額が生じた。また、基盤研究を進展させるために国際共同研究加速基金を申請していたが、不採択となったため、次年度に計画していた国際共同研究先での研究を行うため、本年度の差額部分は、2018年2-3月の期間に国際共同加速基金で実施する予定であった研究の一部の実施に使用することが適切と考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、前年度の差額を含めた900,000円を、国内研究に必要な研究費(15万円)を除き、国際共同研究加速基金の申請で計画していた研究の一部の実施に必要な経費(渡航費、滞在費、謝金等)として使用する計画である。
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