研究課題/領域番号 |
16K04173
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
田辺 毅彦 北星学園大学, 文学部, 教授 (50217105)
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研究分担者 |
長田 久雄 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60150877)
赤木 徹也 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 准教授 (60338275)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ユニットケア / バーンアウト / 介護職場の理念 / 介護ロボット利用 / 業務のICT化 / 介護職員研修 |
研究実績の概要 |
H28年度は、研究代表者を中心に、北海道・東北・関東圏の、ユニットケアに携わる介護職スタッフ(あるいは従来型介護)を対象とした質問紙調査の項目のための情報収集を行い、現在の認知症および認知症ケアに関する問題点を確認し、その内容について評定できるような質問紙を作成することが目的であった。地域的には、やや北海道に偏ったが、多様な施設における介護職員のストレス軽減と職場定着に関する情報取集が行われ、分担研究者や研究助言者たちと内容を評価・分析することができて、有意義な一年であった。特に、介護業務負担を軽減して業務定着を促す要因として、①職場の理念の具体化の程度、②業務におけるロボット利用やICT化の実施状況、③新人教育と研修の継続の程度などが大きな要因となっていることが明らかとなった。 6月に開催された老年社会科学会58回大会においては、パイロット調査を行った結果を発表した。従来型の介護とユニットケアの両方が実施されている施設において介護職員を対象にして、①ユニットケアの実施状況②バーンアウトに関する質問③介護業務におけるストレス状況への対処について質問紙調査を行った結果、ユニットケアの実施によって、バーンアウトのうち情緒的消耗感のみ高まることが明らかとなったが、そのバーンアウトの程度自体は高いものとはいえなかった。したがって、ユニットケアの実施により、バーンアウトが高まったとしても、ユニットケアを行っていない従来型に比べて特段にストレスやバーンアウトが高まるとはいえないと考えられた。以上の内容について、分担研究者や研究助言者だけではなく、現場の介護職スタッフも含めて、広く論議ができ、非常に刺激的な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の調査においては、情報収集の調査対象とした介護職員のストレス低減をめざし、職場定着の努力を行っている施設の多くが、事業規模の大きな社会福祉法人であり、数少ない民間施設も事業規模の大きなところが多かった。従って、中小規模の施設における職員定着の動向が十分把握できていない点が問題として残っており、今後の調査の中で、これらの問題をどのように扱っていくのか、十分検討ができなかった。従って、28年度中に終える予定であった調査内容の設計についての検討に関する情報収集を、できれば、H29年度の前半にも引き続き行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、作成された質問紙を用いて、研究代表者を中心に、ユニットケアを実施する特別養護老人ホーム介護職員を対象に調査を行なう予定である(8月-10月)。対象地域は、北海道、関東の2地域とする。今後は、介護業務負担を軽減して業務定着を促す要因として①職場の理念の具体化、②業務におけるロボット利用やICT化の実施、③新人教育と研修の継続などが挙げられたが、それらが、ユニットケアのハード面(建築等)、システム面(環境設定等)、ソフト面(利用者対応等)とどのような関わりを持ち、どのような役割を果たしているのか、質問紙調査の中でも反映して検討していきたいと考えている。 そして、調査で回収した調査結果を基にして、前述したハード、システム、ソフトの各要因におけるユニットケアの問題点について、総合的に明らかにして、その実際的な解決法の検討を現場職員とのディスカッションなどを通じて行っていきたい(11月-3月)。また、研究経過の中間報告を、日本老年社会科学会、日本認知症ケア学会、日本健康心理学会などにおいて発表する予定である。 最終年度においては、明らかにしたユニットケアの問題点について、調査地域の介護施設や大学等においてシンポジウムやワークショップを開くことで啓発活動を行いたい(5-12月)。具体的には、一般向けのわかりやすい最終報告書の作成や、内容を多角的に分析した書籍出版などを計画している。それらについては、介護職員の研修等でもディスカッションを重ね、できるだけ、現場での利用を念頭に置いたものにしていきたい。そして、研究当該地域の行政関係機関や介護関連協会(老施協やグループホーム協議会、社会福祉協議会等)、介護関連研究会(日本認知症ケア学会地域部会など)に配布したい(12-2月)。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の日程の都合により、予定していた調査結果検討会が実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度7月-8月頃に、東京にて、研究打ち合わせを行う予定で、残額は、その旅費に充てたいと考えている。
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