本研究は,父親の主体的な育児参加に影響する要因を分析し,保育所や認定こども園等の保育関連施設におけるどのような保育者の取組みが父親の主体的な育児参加を促すのかについて明らかにすることを目的とした。 まず,インタビュー調査や質問紙調査によって主体的な育児参加に関する動機づけについて検討し,Ryan & Deci(2000)の自己決定理論の中の有機的統合理論を基に,育児動機づけに関しても自律性の高低によって外発的動機づけ-内発的動機づけの連続性が仮定しうること,自律的な育児動機づけは,実際の育児行動や促進的なペアレンティング調整,夫婦関係満足度,育児効力感と正の相関を持つことを明らかにし,育児動機づけ尺度を作成した。 最終年度は,自律的な育児動機づけを促すための取り組みについて質問紙調査で検討した。子どもの出生時から保育関連施設を利用している期間に,自治体等で実施されている子育て支援に関する講座や保育関連施設での行事への参加状況と自律的な育児動機づけの関連を分析し,出生時から自律的な育児動機づけが高い父親ほど,こうした講座や行事に参加し,参加した意義を感じていること,逆に外発的な育児動機づけを持つ父親ほど,こうした講座や行事に参加せず,参加する意義を見出していないことが明らかとなった。しかし,こうした講座や行事に参加することを通して自律的な育児動機づけが高まる傾向は示されず,子どもの出生前から自律的な育児動機づけを高める取り組みの必要性が示唆された。保育関連施設の取り組みについては,保育者との信頼関係を感じ,保育者から受容的なコミュニケーションを受けている父親ほど,保育者とのコミュニケーションを積極的に取ろうとし,自律的な育児動機づけが高いことが示された。また,保育者から指示的なコミュニケーションを受けていると認知している父親ほど,外発的な育児動機づけが高いことが示された。
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