本研究の目的は、スウェーデン在住のベトナム難民(滞瑞ベトナム難民)に対する調査により、彼らの「定住化」のプロセスや「定住化」促進のために利用した支援やその効果を明らかにする事であり、また既知の知見とともに、日本在住のベトナム難民(滞日ベトナム難民)の「定住化」を促進させるための支援方法を開発することである。研究の進捗に従い「定住化」よりも「統合」がより適切と判断したため、本研究では「統合」という概念を用い、滞瑞・滞日ベトナム難民の生活の様相を明らかにすることとした。 本研究では主に先行研究の検討をつうじ「統合」概念の内容を検討した(2017年度) 。また生活史を中心とする滞瑞ベトナム難民に対する調査(2016~2018年度)及び調査結果の分析をつうじた「統合」に対する促進・阻害要因の明確化を行った(2018年度)。 「統合」概念について「滞日難民が、平時活動する社会において周囲の人々と同等の権利義務を有し、かつ日本での生活にあたって必須な有形無形の要素を取得した上で、周囲の人々と交流しながら生活できる状態、及びこのような生活の過程」と定義した。また調査結果を分析した結果、滞瑞ベトナム難民の生活には「統合」に関係する要素が含まれており、それらは【住環境】【就職・就労】【就学・学習】【言語サポート】、さらにこれらに対して影響を与える【後押し】【立ち止まり】の6カテゴリーが含まれていることを明らかにした。またこれらに含まれる要素の大部分は「統合」促進に寄与するものであるが、わずかに「統合」に対する阻害的な要因も確認された。本研究では以上の点を論文として公刊した。 滞日ベトナム難民に対する支援方法に関し、本研究の結果及び既知の知見からインフォーマルサポートで支援しうる部分と、フォーマルサービスが必要な部分を明確にして支援することと、諸サポートの創出の必要性が示唆された。
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