研究課題/領域番号 |
16K04193
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山田 祐子 日本大学, 文理学部, 教授 (90248807)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 虐待 / 死亡 / 検証 / 介護殺人 / ソーシャルワーク / 権利擁護 / 地域包括支援センター |
研究実績の概要 |
2006年「高齢者虐待防止法」施行後、国による大規模調査が行われ、虐待の概要はある程度明らかにされ、支援の方法論も「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル」が構築された現在において、学術的貢献で最も求められているのは、死亡事例等の「評価」と「検証」であり、その方法の開発および都道府県、市区町村における体制整備が急務となっている。そこで本研究では、「高齢者虐待による死亡事例等の評価と検証にかかわる体制整備」に焦点を当て、その理論と方法の研究開発をテーマとする。 2016年度においては、情報収集と調査実施の準備に充て、本研究テーマに関する文献調査と資料収集を行った。とくに既存調査とともに、「検証」に関する自治体の動向についての情報収集と施策推進を行った結果、研究代表者が高齢者防止施策に関わるA県において、県が実施主体となり県内の高齢者虐待による死亡事例等の検証を実施し2016年度報告書を策定するという成果をあげることができた。 2017年度においては、研究代表者が過去に実施した調査である独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業学術研究助成基金助成金基盤研究(C)(一般)(平成25年~28年度)(課題番号25380777)「虐待による高齢者の死亡事例等と検証に関する調査研究」により、全国の都道府県(悉皆調査)、政令市(悉皆調査)、市区町村(悉皆調査)の高齢者虐待防止主管課および、全国の地域包括支援センター2000カ所に、2015年度から2016年度にわたり質問紙による郵送調査を実施した結果について、本研究テーマに関連した都道府県、区市町村における検証状況について再分析を行い、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、具体的には以下の実施を予定している。 ①都道府県、市町村および関係機関等において調査研究を行い、数量把握も含めた実態把握を行う、 ②①をもとに死亡事例等の評価と検証方法にかかわる研究開発と方法論の規準化を検討する、③①、②をもとに、死亡事例等の評価と検証方法に関する都道府県、市区町村における体制整備と効果的な施策を検討する。 現在までの進捗状況について、②については、研究代表者が部会長として参画したA県において、都道府県においては初めてと思われる高齢者虐待による死亡事例等の検証報告書が策定されたことで、一定の成果をあげたと思われる(2016年度)。①の調査に関しては、後述する「今後の研究の推進方策等」において詳しく説明するが、国の施策の推進状況の変化により、本研究テーマについて、より効果的な調査を実施するため、調査実施計画を変更し、2018年度に調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度において、本研究テーマをめぐる国の施策推進状況が大きく変化すると思われる動きがみられ、調査実施時期の再検討を行い2018年度に実施の予定とした。 これまで、厚生労働省は、毎年実施している「高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」において、死亡事例の詳しい公表をしてこなかった。また事例の研究は法に基づき、通知において奨励しているものの、「検証」についての施策を具体的に打ち出してこなかった。しかしながら、2017年1月31日の予算委員会のおける国会議員の介護殺人に関する質問を受けて、厚生労働大臣が「2017年度において死亡事例の検証を行う」ことを明言し、2017年度に与党自民党において「虐待等に関する特命委員会」が開催される運びとなるとともに、厚生労働省の研究事業として、介護殺人の検証関連で平成29年度老人保健健康増進等事業「高齢者虐待における重篤事案等にかかる個別事例についての調査研究事業」(認知症介護研究研修仙台センター)が行われ、研究代表者も委員として参加し、2018年3月に報告書を策定した。この動きを受け、2018年度において、地方公共団体における虐待事例の検証が推進されていくと思われる。したがって、本研究では、2017年度実施を予定していた質問紙による郵送調査の全国調査および訪問面接調査の実施年度および日程を調整し2018年度に実施することにした。調査実施時期の変更により、本研究テーマに関わる質の高いデータが得られると予測され、非常に重要な知見を得る可能性を得て、学術的意義が高まるだけでなく、更なる人権福祉の向上に寄与するものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2017年度に実施予定であった全国調査の費用について、前述の理由により2018年度に実施することにしたため、2017年度の使用額の調査費用分をそのまま2018年度に繰り越すこととなった。 (使用計画) 2018年度の使用額の使用計画については、①質問紙による郵送調査の、調査票の印刷費、発送費用(通信運搬費)、②質問紙による郵送調査の、回収後の作業、集計の作業等にかかわる人件費、データ入力、既存調査のデータ再入力および再集計にかかわる委託費に使用する予定である。また、調査費用をできるだけ節約し、2017年度に行った分析を継続し、調査結果の概要版を作成し、調査の際に同封し、調査協力および研究結果の社会的還元を図ることを検討している。
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