研究課題/領域番号 |
16K04201
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
山井 理恵 明星大学, 人文学部, 教授 (40320824)
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研究分担者 |
李 恩心 昭和女子大学, 人間社会学部, 助教 (00587339)
石田 健太郎 明星大学, 教育学部, 准教授 (10610339)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / コミュニティソーシャルワーク / 商業資源 / 見守り |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、コミュニティソーシャルワーク機関が商店やスーパーマーケット、金融機関などの生活関連の営利事業所(以下、商業資源)との連携の実態の解明とその連携を促進するプログラムを開発することにある。 1)研究の枠組みを検討するために、研究会を開催し、我が国の商業資源や地域住民が参加している見守りの事例とその分析を検討した。東京都が先進的取り組みを参考に『高齢者等の見守りガイドブック』を編纂した経緯について、当時中心的な役割を担っていた大学教員から専門的知識の提供を受けた。 2)関東地域の自治体の行政機関、地域包括支援センターや社会福祉協議会、地域福祉推進団体等のコミュニティソーシャルワーク機関の社会福祉士、行政職員等に対して、商業資源(スーパーマーケット、商店、建設会社等)との連携についての面接調査や参与観察調査を実施した。社会福祉士らが、母体法人と関連する地域資源、商店会や商工会議所に所属する地域資源と積極的に接触し、協力を促していることが明らかになった。 3)地域活動に参加している住民を対象に、コミュニティソーシャルワーク機関の活動への評価についての面接調査を行った。地域セミナーにおける商業資源スタッフからの情報提供が地域生活の安心感を高めることに寄与していることが解明された。 4)アイルランドやイギリスのアルツハイマー協会等に対する継続的な調査や資料収集を実施した。アイルランド・アルツハイマー協会では、認知症高齢者の地域生活を支えるモデル事業Wicklow Dementia Projectの成果をもとに、ダブリンやアイルランド全域にプロジェクトを拡大している。イギリス・アルツハイマー協会については面接調査はできなかったものの、資料分析の結果、dementia friend制度がスーパーマーケットや銀行などにも拡大し、見守り活動が商業資源にも拡大していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、国内調査については、①コミュニティソーシャルワーク機関の社会福祉専門職、②地域住民、③商業資源の三者の視点から、コミュニティソーシャルワーク機関と商業資源の連携について調査を行うという計画であった。 2016年度は、関東地域において積極的な活動を行っているコミュニティソーシャルワーク機関の社会福祉士や行政職員、地域住民に対する面接調査や資料収集、活動への参与観察を通して、社会福祉専門職や地域住民の視点から商業資源が地域活動に参加するさいの利点や限界が解明された。さらには、コミュニティソーシャルワーク機関と商業資源との連携を促進するための方法についても、その方向性が解明されつつある。一方において、商業資源に対しては、彼らの地域活動時の参与観察にとどまった。そのため、商業資源の視点からのコミュニティソーシャルワーク機関との連携やそのための支援について、解明が十分にできていない。 海外調査については、アイルランドの訪問調査は実施できたものの、イギリス・アルツハイマー協会については、訪問調査が実施できず、資料収集や「認知症サポーターキャラバン平成28年度 表彰・報告会」(平成29年2月4日開催、全国キャラバン・メイト連絡会主催)におけるビビアン・フランシス同協会マーケティング・渉外担当課長講演「英国ディメンシア・フレンズの取り組み」の聴講にとどまり、イギリスの取り組みへの調査や分析が十分ではなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、(a)社会福祉専門職、地域住民に加え、商業資源に対する調査を行うことで、商業資源が地域包括ケアに参加する理由を明らかにすること、(b)調査対象地を拡大することで、共通性と差異を踏まえたコミュニティソーシャルワーク機関と商業資源との連携促進プログラムを検討することを目的としている。そのため、以下の4点について研究を実施する予定である。 1)2016年度に引き続き、東京都多摩地域、23区のコミュニティソーシャルワーク機関や地域住民への調査を継続して実施する。並行して、商業資源を対象に、①商業資源が地域活動に参加した理由、②参加したことの利点と課題、③地域活動に参加するうえで有用であった社会福祉専門職からの支援を中心に、調査や資料収集を実施する。そのうえで、東京都以外の都道府県の取り組みとして、北海道や福岡県などのコミュニティソーシャルワーク機関の専門職に対しても、調査や資料を行う。 2) 9月に韓国ソウル市の認知症支援センター、老人総合福祉館等の調査を実施する。並行して、2016年度に収集したアイルランド・アルツハイマー協会の資料を中心に、イギリス・アルツハイマー協会の資料についても資料収集を継続し、同協会が商業資源の参加のために実施している支援方法とその効果について明らかにする。 3)秋以降は、我が国における地域包括ケアの方向性を踏まえながら、各地域における社会福祉専門職と商業資源との連携についての共通性と差異を検討し、地域包括ケアにおける商業資源の参加を促す支援について検討する。 4)これまでの研究結果をもとに、学会報告と論文投稿を実施する。日本ソーシャルワーク学会大会、日本社会福祉学会秋季大会ならびに中国深センで開催されるアジア太平洋ソーシャルワーク会議にて、報告する。あわせて、学会誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中に、高齢者に加え、子どもや家庭支援をも含めた機関の一つとして、福岡県のコミュニティソーシャルワーク機関の訪問調査を予定し、交渉を行っていた。しかしながら、実際の調査実施に際しては、先方の日程や業務上の都合により、平成28年度中に調査を行うことができず、平成29年度に延期となった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、改めて、先述の福岡県のコミュニティソーシャルワーク機関にと調査日程を交渉中である。平成29年度内には、すでに実施中の大田区や立川市等と合わせて、調査を新たに実施する予定である。
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