研究課題/領域番号 |
16K04208
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
野口 友紀子 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (20387418)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会事業 / 社会教育 / 感化 / 教化 / 農村社会事業 |
研究実績の概要 |
研究の全体構想は、明治期後半から昭和初期までの社会事業の範囲の変化の過程から社会福祉事業の形成史を描くことであった。社会事業を教育政策の範囲との関係から明らかにするために、社会事業と社会教育との関係を分析した。 明らかになったのは次の4点であった。第一に、社会教育研究者の小川利夫と社会福祉史研究者の池本美和子の先行研究から、社会事業と社会教育との関係を見る場合、「感化や風化」と「社会教化や社会教育」の中身の違いや入り組んだ関係を解明する必要があることを明らかにした。第二に、雑誌『社会事業』の分析から感化が生活問題・道徳問題・農村問題に働きかける多様な側面があることを明らかにした。第三に、「農村社会事業」に焦点を当て、農村問題は1925年以降は小作問題ではなく生活問題と理解され、娯楽や文化にまで範囲が及ぶが、一方で地縁・血縁の支え合い、隣保共助を理念と考えられていたことを明らかにした。第四に、文部省が社会教育として行う生活改善を検討し、教育による生活改善は人びとの日常生活上の習慣や規律であり、社会教育が個人の内面に入り込み介入するものとして理解されていたこと、生活改善により生活問題を発見したことを明らかにした。 このような歴史分析は、社会事業は同時代の他領域との関係の中で、社会事業の活動内容や範囲が決まってくる可塑的なものであり、時代の経過の中で形を変えながら、確固とした枠を持たずに形成されたという考え方を前提としている。 この研究の意義は、従来の社会福祉の歴史観である社会福祉というものが既に形あるものとして存在していることを前提とした歴史、例えば通説となっている通史や、近年主流の地域史も含めた歴史とは異なる社会福祉の歴史の見方を提示できたことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最終年度にあたる平成30年に体調不良で入院したことから、研究に専念できるはずの夏休み期間に研究時間を取ることが難しかった。現在では体調は回復しているが、本研究のまとめの作業を十分に行うのにもう少し時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間の1年間の延長が承認されたため、この研究の総括を平成31年度に行う。 すでに、3本の論文をまとめており、1本は投稿中である。さらに平成31年度の学会での報告を計画している。これらの4年間の研究成果を総括し、最終的に冊子にまとめる作業を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の最終年度であった2018年に体調を崩し入院したため、研究を予定していた夏休みに十分な研究を行うことができなかった。そのため次年度使用額が生じてしまった。 体調が回復し、1年間の延長が認められたため以下の内容を計画している。2019年度は日本社会福祉学会秋季大会での報告と論文の執筆を行い、4年間の本研究の総括を行うことを予定している。そのほか、毎月の社会福祉史関連の研究会への参加と情報収集、本研究に参考となりそうなシンポジウムへの参加と情報収集を行う予定である。
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