研究課題/領域番号 |
16K04209
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
越田 明子 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (70352458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / 福祉的ニーズ / 基礎自治体 / 生活支援ハウス運営事業 / 高齢化 / 生活困窮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自治体独自の福祉施策である生活支援ハウス運営事業に着目し、地域包括ケアシステムの枠組みにおいて、介護保険等の一般施策がうまく対応しない福祉的ニーズに対する基礎自治体の独自性と役割について明らかにすることである。 今までの研究とA県調査から、この生活支援ハウス運営事業は、90年代以降の福祉政策の変遷過程において、介護保険などの一般施策がうまく及ばない地域の代替や受け皿として導入が推奨され、実情に応じ様々な意図をもって運営されてきたことが明らかになっている。 本研究では、住民の福祉的ニーズと関連して基礎自治体による運営をめぐる独自の判断や期待した機能の変遷についてA県調査を継続する。さらに全国調査の実施によって、今まで明らかになっていない地域の状況を加味した検討をすすめる。 今年度は、全国調査に先駆けて、調査票作成や今日的課題を整理のために、A県の訪問調査を続けた。その中でも、介護保険開始以降この事業を拡充してきた一自治体の担当課や関係機関の協力を得て、施策運営の背景となる基礎自治体の人口動態や要介護者の状況、保健・医療・福祉・介護等事業の変遷、入居者の入居理由や経済的背景、介護状況、退去の理由等について、インタビューと合わせて可能限り数量化した情報を閲覧し収集した。そして地域ケア会議にも複数回出席した。この自治体の高齢化率はすでにピークに達し、地域高齢者や入居者の高齢化や重度化によって新たな課題が表出していた。介護をはじめとする生活全般の福祉的ニーズについて、基礎自治体がどのように把握し基準を設けて事業運営を継続するかが課題であった。 今年度は、予定よりも詳細な情報を得ることができた。さらに設置から今日に至るまでの長期的な取り組みの概要について確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が着目している生活支援ハウス運営事業に関連する既存資料やデータは少ない。したがって、研究をすすめながら基礎資料を作成していく必要がある。今年度は、A県の一自治体の担当課や介護支援専門員、介護保険事業所、事業運営を委託されている社会福祉法人などの複数の関係者や関係機関の協力を得ることができた。これについては、当初の計画以上に進展している。しかし、この成果を論文として発表できていない。また、多岐にわたる福祉的ニーズに対する基礎自治体の独自の判断や対応については、A県の継続調査の結果をふまえ慎重に質問票を作成する必要があったため、全国調査の実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次の作業を実施する。 1)A県自治体の継続調査の成果を論文として発表する。2)A県自治体への継続調査が当初の計画以上に進展しているため、全国調査については予定を一年遅らせて実施する。全国の生活支援ハウス運営自治体の一覧については、過去に調べたものに過不足がないか都道府県別・市町村別に再度問い合わせ郵送先を確認する。そして調査票の精査を経て、全国調査を実施する。今年度中には回収しデータの入力を試みる。3)回収状況を確認し、全国の中でも特徴ある取り組みをしている自治体への訪問調査を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、A県自治体への継続調査と、全国の生活支援ハウスを運営している自治体を対象とする郵送調査を実施する予定であった。しかしA県自治体の担当課や関係者から予定以上の協力を得ることができたため、複数回の訪問調査を優先した。したがって秋に計画していた全国調査の実施が遅れ、当初計上していた印刷費および通信費等の経費を次年度使用額として繰り越すことになった。また、成果の発表にかかる旅費等の使用がなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に、全国の生活支援ハウスを運営している自治体を対象とした郵送調査を実施し、回収、データの入力を試みる。繰り越した研究費は初年度計画の枠組みで使用し、全国調査に実施及び集計に使用する。また、A県自治体を対象とした継続調査の成果を発表し論文にするための経費として使用する。
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