研究課題/領域番号 |
16K04209
|
研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
越田 明子 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (70352458)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地域包括ケア / 福祉的ニーズ / 基礎自治体による福祉運営 / 生活支援ハウス運営事業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自治体独自の福祉施策である生活支援ハウス運営事業に着目し、地域包括ケアシステムの枠組みにおいて、介護保険などの一般施策がうまく対応しない福祉的ニーズに対する基礎自治体の取り組みについて明らかにすることである。 この生活支援ハウスは、法令に規定されず市町村の実情にあわせた事業として展開されており、全国的な運営状況に関しては明らかになっていない。2017年度は、本研究開始前から実施してきたA県運営自治体への訪問調査(質的調査)の継続と、全国の運営自治体を対象とする質問紙調査(量的調査)を実施した。先行研究が少ないことから、本研究においては信頼性の高い調査票の作成することを重視した。特に調査項目や調査内容が全国の運営状況を網羅できるよう、人口規模や開設年度の異なる自治体の担当者(施設管理担当、入居者選定担当)の協力を得てプレテストを繰り返し調査票を作成した。また都道府県における運営自治体の把握状況やその正確性に差がみられており、調査対象自治体のピックアップについても、今まで把握してきた情報をふまえ再度問い合わせながら実際を確認し、一覧を作成した。 2017年度秋から冬にかけて郵送調査を実施した。379運営自治体のうち300自治体から回答があり、回収率は79%であった。入居者の状況から、心身の状況、低所得、虐待、家族問題、地域の居住環境などの福祉的ニーズに対応している様子がみられた。さらに今まで知ることのなかった新たな運営方法について情報があった。一方で、一般財源に依拠する運営であることから費用対効果に関する意見もみられた。2018年度に結果の詳細分析をすすめる予定である。 その他、本調査の準備中に、廃止や目的変更を試みた複数の自治体から運営課題について情報を得た。基礎自治体の福祉的ニーズに対する取り組みに影響する事項について示唆を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国調査の実施において、高い回収率(79%)を得たことは、今まで明らかでなかった生活支援ハウス運営の状況把握や分析に大きく影響すると思われる。また当初予測していなかった多様な取り組み例を知ることができ、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は次の作業をすすめる。 1.全国質問紙調査(量的調査)の結果について、分析をすすめる。 2.質問紙調査を通して得た新たな知見に関連して、該当自治体の協力を得ながら訪問調査(質的調査)を実施する。 3.調査の分析結果をふまえ、論文として成果を公開する。 4.調査の協力自治体へ結果を報告し、次の進展につなげる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は全国質問紙調査の実施が主な取り組みであった。訪問調査もA県自治体が主であったため旅費支出が少なかった。 2018年度は、質問紙調査の分析をすすめる。そして、今まで実施してきたA県自治体への継続調査とあわせて、質問紙調査の結果にみられた特徴ある取り組みを推進している自治体担当者へのインタビューも予定している。したがって、主に調査旅費と調査結果の分析に関連した専門家の助言や、論文執筆にかかる経費にあてる。
|