研究課題/領域番号 |
16K04216
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
森口 弘美 同志社大学, 社会学部, 助教 (10631898)
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研究分担者 |
市瀬 晶子 関西学院大学, 人間福祉学部, 講師 (50632361)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピソード記述 / 知的障害者 / 自立 / インクルーシブ・リサーチ / トランジション / 学校から社会への移行 |
研究実績の概要 |
重度の知的障害者を包摂する自立概念の確立に向けて次のことに取り組んだ。 ①「親元からの自立」に関する関与観察とエピソード記述:平成28年に新しく開設された福祉ホームでフィールドワークを行い関与観察を行うとともに、入居者の家族3組に半年ごとのインタビュー調査を行っている。この調査で得たデータについては今後、当初の予定どおりエピソード記述の書き起こしやその検討を進めていく。加えて、自立概念の確立に向けては、フィールドである福祉ホームで生じる課題に対してより多角的な関与を行う必要があると考えており、この点に関しては次年度に検討を進める。 ②「学校から社会への移行」に関する実践的研究:文献研究を行うとともに、福祉型専攻科との協働事業として「私たちの暮らし調査」に取り組んだ。これは知的障害者を調査研究のパートナーとして位置付ける試みであり、国内では先行例がごくわずかしかない。この実践的研究については、海外で近年急速に議論の蓄積が進んでいるインクルーシブ・リサーチとして検証を進めており、今後はこの検証を踏まえて知的障害者を取り巻く社会関係の変容についての考察を進める。 ③エピソード記述の方法論に関する検討:研究会を開催しエピソード記述の方法論について議論を深めるとともに、本務校以外でも機会を得て本方法論について紹介することができた。また、エピソード記述を用いて執筆した著書『知的障害者の「親元からの自立」を実現する実践―エピソード記述で描き出す新しい枠組み』(2015年)が、日本社会福祉学会2016年度学会賞奨励賞(単著部門)を受賞したことにより、方法論の普及と議論の深まりにつながっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①「親元からの自立」に関する関与観察とエピソード記述、および③エピソード記述の方法論に関する検討については、当初の予定どおり順調に進めている。 ②「学校から社会への移行」に関する実践的研究に関しては、次年度に予定していた「福祉型専攻科との協働事業の実施」を本年度に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
①「親元からの自立」に関する関与観察とエピソード記述、および③エピソード記述の方法論に関する検討については、当初の予定どおり進めていきたいと考えている。なお、①に関連するフィールドワークについては、福祉ホームで生じる課題に対してより多角的な関与の可能性を検討したいと考えている。 ②「学校から社会への移行」に関する実践的研究に関しては、当初に予定していた英国での現地調査に加え、30年度に予定していた学術交流を29年度中に実施できるように準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
・旅費については、研究会に参加する連携研究者の交通費を計上していたが、日程が合わず参加できなかったケースがあったり、また参加した場合でも連携研究者が自身の所属機関の公費により旅費を支出したケースがあった。 ・人件費に関しては、インタビュー協力者が当初予定していた人数よりも実際に協力が得られた人数が少なかったため必要な謝金が減額になった。また、英文論文を含めた資料整理に必要な人件費を見込んでいたが、研究代表者の研究時間の範囲で遂行することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、30年度に予定していた学術交流を前倒しで実施するべく準備を進めているが、この学術交流の準備に必要な人件費に充当させる予定である。
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