研究課題/領域番号 |
16K04219
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
神部 智司 大阪大谷大学, 人間社会学部, 教授 (10342164)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 介護老人福祉施設 / ケア機能 / 連携 / 地域支援 / 地域包括ケアシステム |
研究実績の概要 |
前年度に続き、高齢者福祉施設における「地域連携への取り組み」に関する先行研究(学術図書・論文、その他関連資料等)を幅広く収集してレビューを行い、地域福祉の概念として提唱されてきた「施設の社会化」論や「なぎさの福祉コミュニティ」論などにおける高齢者福祉施設の地域社会での位置づけ、社会福祉法人改革のもとでの高齢者福祉施設による地域公益活動のあり方、そして地域包括ケアシステムにおける介護老人福祉施設の役割と機能等に着目した検討を行った。また、学会等が開催する「福祉経営」「社会福祉法人改革」「地域包括ケア」「地域共生社会」等をキーワードとしたフォーラムや研修会に参加し、最新動向の把握や論点の整理づけを行った。これらの研究活動から、高齢者福祉施設の代表格である介護老人福祉施設のケア機能を活かした地域連携への取り組みに関する文献的検討の成果に関する論文を執筆した。 さらには、介護老人福祉施設の職員(施設長、生活相談員等)を対象とした訪問面接調査を実施し、事前の予備調査に基づいて作成したインタビューガイド(4項目)を用いて、施設のケア機能を活用した「地域との連携に関する取り組み」の認識を把握した。本調査では、ICレコーダーで録音した音声データをテキストデータ化し、その内容の類似性や抽出したカテゴリーの関係性に着目した分析に取り組んでいる段階にある。加えて、地域におけるネットワークづくりの基幹的役割を担う地域包括支援センターの職員を対象とした聞き取り調査を行い、介護老人福祉施設に対してどのようなケア機能の地域展開を求めているのかについての把握を試みた。 これらの文献および質的調査による研究により、平成30年度の量的調査の実施に向けた基礎資料を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度における研究は、当初の計画に対して若干の遅れが生じているものと考えられる。具体的には、前年度より実施している文献研究および介護老人福祉施設の職員(施設長、生活相談員等)を対象とした質的調査(訪問面接法)の研究で得られた知見を整理するとともに、その知見を活かして自記式質問紙を作成し、介護老人福祉施設を対象に郵送法によるアンケート調査(量的調査)を実施する予定であった。しかし、文献および質的調査の研究にそれぞれ時間をかけて取り組み、質問紙の作成に慎重を期したことで、量的調査の実施を平成30年度に延期させたことによるものである。 しかし、現時点で質問紙はほぼ完成されており、研究代表者が所属する研究機関の研究倫理委員会での審査、承認を経て、平成30年7月までに量的調査を実施できる見込みであることから、今後の研究計画に大きな遅れを伴うことはないと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度より開始した地域包括支援センターを対象とした訪問面接調査(質的調査)を6月まで継続的に実施したのち、ICレコーダーに録音した音声データをテキストデータ化して、「介護老人福祉施設に対してどのようなケア機能の地域展開を求めているのか」に焦点を当てた内容分析に取り組んでいく。本調査は、介護老人福祉施設による地域連携への取り組みに対して、施設サイドからの一方向的なアプロ―チではなく、地域社会サイドからのアプローチも含めて双方向的に検証していくために必要不可欠であり、本研究の独創的な視点であると考えている。 また、介護老人福祉施設を対象とした郵送法によるアンケート調査(量的調査)を7月に実施する。調査対象施設は近畿圏(2府4県)の介護老人福祉施設(全数)とし、各施設の生活相談員に質問紙への回答および返送を依頼する。また、回収された質問紙の回答(量的データ)の入力・集計作業を実施して調査報告書を作成するとともに、統計手法を用いたデータ解析を行い、「地域との連携に関する取り組み」の構成領域とその関連要因について検証する。 さらに、これらの調査研究で明らかにされた知見を整理したのち、研究成果報告書および学術論文の作成に取り組み、研究成果を広く発信させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
近畿圏の介護老人福祉施設(全数)の生活相談員を対象に自記式質問紙を用いた郵送法によるアンケート調査(量的調査)を実施する予定であった。しかし、先行研究のレビューや介護老人福祉施設および地域包括支援センターの職員等を対象として実施した個別インタビュー調査(質的調査)に時間を要したこと、また、質問紙の作成に慎重を期したことなどにより、量的調査の実施に係る費用が発生することなく、残額(625,048円)が生じることとなった。 平成29年度の残額と合わせた平成30年度の助成金については、まず、個別インタビュー調査(質的調査)の集計・分析結果に基づいて作成する調査報告書の印刷費等に使用する。また、アンケート調査(量的調査)の実施に係る自記式質問紙の印刷費と郵送費、返送された質問紙のデータ入力補助者への謝金、統計解析のためのソフト購入費、作成する調査報告書の印刷費等として使用する。そして、質的・量的調査での知見を整理して学会大会等で発表するための大会参加費および旅費、さらには学術論文の投稿料等にも使用する。
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