研究課題/領域番号 |
16K04222
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
新川 泰弘 関西福祉科学大学, 教育学部, 准教授 (60352861)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ファミリーソーシャルワーク / 地域子育て支援拠点 / 実践教育モデル / 試行と改良 |
研究実績の概要 |
芝野(2002)によるM-D&DにおけるフェーズⅢ(試行と改良)に即して、地域子育て支援拠点利用者の子育て環境と利用者ニーズを把握し、それらの関連性について検討、分析するための調査研究を行った結果、子育て環境は、「子育てについて語り合う子育て仲間」「子育てについて語り合う家族」「地域社会の環境」から構成され、利用者ニーズは、「直接的な親子支援」「間接的な親子支援」「配慮を必要とする子育て家庭に対するアウトリーチ」から構成されていることが明らかになった。また、地域社会の環境は、子どもの年齢が高くなっていくにつれてより充実しており、自分の子どもの出生前までに小さい子どもと関わった経験のある親の方が、子育てについて語り合う子育て仲間を有意に多く持っていることもわかった。そして、配慮を必要とする子育て家庭に対するアウトリーチの利用者ニーズは、子育てについて語り合う子育て仲間の低群の方が高群よりも有意に低い得点であるとともに、また、間接的な親子支援の利用者ニーズは、子育てについて語り合う家族と、地域社会の環境の低群の方が高群よりも有意に低い得点を示した。そのため、子育てについて語り合う子育て仲間が少なかったり、家族での子育てについての語り合いが少なかったり、地域で子育て支援を得ることの少ない利用者に対しては、潜在ニーズを考慮して、個別のニーズを把握し、間接的な親子支援やアウトリーチしていくことが期待される。また、地域子育て支援拠点に求められている利用者支援や地域支援のニーズに対応していくため、利用者ニーズを個別に把握して、サービスに的確につないでいくソーシャルワークが重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反省的研究から実証的研究に架橋するファミリーソーシャルワーク実践教育モデル開発に取り組むにあたり、この分野の先駆的研究者である関西学院大学芝野松次郎名誉教授に継続的なご助言、ご指導を受けて研究に取り組めている。子どもと子育て家庭を支援する専門職の知識の中にある理論知と実践知を言語化し、明確にする反省的研究においては、地域子育て支援拠点専門職の実践知を明らかにするための半構造化インタビューガイドを作成し、質的調査研究に取り組んだため、今後はデータを分析、検討していく。なお、現在までの調査研究において研究協力を得ている都道府県、基礎自治体の子ども家庭福祉を担当する部局、社会福祉法人、地域子育て支援拠点にも引き続き研究協力を得ながら、研究を発展させていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、研究開発した実践教育モデルを実践者が活用できる知識と技術の新たな創出が挙げられる。そのためには、M&D&DにおけるフェーズⅣ(普及・採用とカスタマイズ)に取り組み、ファミリーソーシャルワークの担い手である実践者が研究者とともに応答的かつ主体的に深く学び合うファミリーソーシャルワーク実践教育に向けて、まずは社会福祉学、教育学、心理学、医学などの分野における科学的、学術的な理論知に注目していきたい。次には、日々の実践を吟味、検証して、実践の中にどのような知があるかを究明しなければならない。その後、実践者と研究者が共同で実践知を明らかにする反省的研究へと進み、学び合いと省察の成果を分析、検討し、実践現場との共同により実践効果を測定し、ファミリーソーシャルワーク実践教育モデルの普及・採用と維持するための現場に適ったカスタマイズに取り組んでいきたい。
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