保育所から地域子育て支援拠点への配置換えを経験した保育士を対象に、子育て支援についての半構造化インタビュー調査を行い、保育所保育士の子育て支援と地域子育て支援拠点保育士の子育て支援の関係について、そして、そこに浮かび上がってくる課題について検討した。それに際しては、保育所保育士30年、保育所主任保育士2年、地域子育て支援拠点主任保育士6年、地域子育て支援拠点所長2年のキャリアがあるAさんに依頼し、調査の趣旨及び目的に関して説明を行って調査協力の同意を得た。このAさんを対象に半構造化インタビューにより調査を実施し、その調査データについて、SCATによるデータの分析手続きに従い、テクスト中の注目すべき語句を抽出し,テクスト中の語句を言い換えた。そして、子育て支援の質の違いと転換に関するストーリーラインとテーマ・構成概念を図式化した。このことに基づき、Aさんが、保育所から地域子育て支援拠点への配置換えにより、「ソーシャルワーク的な枠組み」の中で地域子育て支援拠点保育士が「支援的感覚」で行う子育て支援と、「ケアワーク的な枠組み」の中で保育所保育士が「指導的感覚」で行う子育て支援との異質性に気づいていることが明らかになった。また、その場合、ケアワークとソーシャルワークのつながりを理解した上で、「ソーシャルワーク的枠組み」と「ケアワーク的枠組み」の違いを捉えていることも確認できた。本研究の成果は、インタビュー調査という方法を通して、保育所保育士の子育て支援と地域子育て支援拠点保育士の子育て支援の質的相違とその関係について解明できたところにあるといえる。今後は、子育て支援への質の転換をいかに具体的に図っていくのか、それにあたっては、とりわけ日々の実践を省察するリフレクションというものがどのように関係してくるのかという問題に取り組んでいくことが課題となってくる。
|