2019年度は、以下3つの研究を行った。 1.量的調査による子育て家庭支援領域における「地域支援」の現状把握:地域子育て支援拠点事業と利用者支援事業(以下、拠点事業等)における「地域支援」では、地域資源との協力が意識されているものの、協働を意識するまでには至ってないことがうかがえた。また親子や地域の人々を対象とする事例など、地域において直接的な支援に取り組む傾向が強く、地域全体を視野にいれた地域の人々の関係性の把握、調整などの間接的な支援に取り組む拠点事業等は少なかった。 2.子育て家庭支援における社会的包摂を志向する「地域支援」の実践モデルの構築:全ての子育て家庭と地域の人々の関わり合いをつくりだす従事者の働きとして、【従事者が地域の人々とつながる】【子育て家庭と地域の人々の関わり合いをつくりだす】が捉えられた。また個別の子育て家庭を地域の支え合いに巻き込む従事者の働きとしては、【親子が地域の人々に関わることを支える】【子育て家庭の支え合いに親子を巻き込む】【親子を支える地域の人々の働きを促す】が捉えられた。拠点事業等の「地域支援」の従事者は、地域の中に多層的な承認関係を創り出すことで、その地域を生活圏とする親子を支えていることが示唆された。 3.子育て家庭支援領域における「地域支援」の特性把握:他領域で「地域支援」を担う従事者を対象としたヒアリング調査を行い、本研究の「実践モデル」との類似点や相違点を尋ねた。結果、拠点事業等の従事者による「地域支援」は、親子の生活圏域で取り組まれており、国や自治体(マクロ)の範囲で、共生文化にもとづくケアリングコミュニティを創造するような働きは認められないことが指摘された。拠点事業等の従事者が予防的な子育て家庭支援におけるミクロからメゾ、社会福祉協議会等がメゾからマクロの「地域支援」を担いつつ、連携により機能を補完し合うことも一案である。
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