2016年度に実施した障害者相談支援事業所の相談支援専門員へのインタビュー調査と、2017年に実施した地域包括支援センター等の相談援助職へのインタビュー調査で明らかになったことを確認し、より幅広く現状や課題についての情報を得るために、2018年度にはA県内の5つの都市の全ての障害者相談支援事業所と地域包括支援センターの合計250ヵ所を対象にアンケート調査を実施した(回収率31.6%)。 質問票では「中高年知的障害者と高齢の親の同居家族への相談支援」の実績を踏まえて、①知的障害者の状況、②高齢の親の状況、③相談支援の経過、④相談支援に際しての課題、⑤障害分野と高齢分野の連携、などに関する質問項目を設定した。単純集計からは、知的障害者本人と親の両方に医療・介護・日常生活などの面でニーズがあり、親子として、家族としての生活課題として経験されていること、障害分野と高齢分野がそれぞれの立場から親子にアプローチし、親子を支えるための連携・協力を行っていることが明らかとなった。また、両相談機関の比較分析の結果、障害者相談支援事業所が関わるケースではより重度な知的障害者が多く、親子ともに障害や加齢に伴う機能低下などの課題がより深刻であること、一方で地域包括支援センターでは、自立度が高い知的障害者が多く、手帳がないなど福祉に繋がってこなかったことが支援に際して課題になることが窺えた。さらに自由記述回答からは、障害分野と高齢分野では援助の視点や進め方に違いがあるためにうまく連携できないことがあり、また制度や障害特性に関する知識の不足、障害福祉と高齢福祉の制度の壁も相談支援における課題として指摘されていた。 知的障害者を長年ケアしてきた親の高齢化に伴って相談支援につながるケースは増えており、地域で親子を支えるために障害分野と高齢分野の連携・協力が今後さらに重要となることが示唆された。
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