研究課題/領域番号 |
16K04231
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
小笠原 慶彰 神戸女子大学, 健康福祉学部, 教授 (00204058)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会事業主事 / 地方社会事業職員制 / 待遇職員 / 小田直蔵 |
研究実績の概要 |
戦前期の神戸において社会事業の分野で活躍した小田直蔵という人物がいた。彼は兵庫県の行政分野で社会事業主事の位置づけにあった。小田は、1885(明治18)年、新潟県生まれで、1912(明治45)年東京帝大卒業、大学院に行きながら内務省の雇(民政資料の編集に従事、『民政史稿』か?)になり、1917(大正6)年4月、兵庫県慈恵救済事業嘱託(内務部議事課勤務)として着任し、救済協会の創設と部落改善の事務に従事する。この間1919(大正8)年には県に救護課(後、社会課)設置され、救護視察員制度が実施されている。1927(昭和2)年から1942(昭和17)年まで前述のように兵庫県県社会事業主事に任命されている。 ところで社会事業主事とは、「地方社会事業職員制」によって定められた職制である。これは1925(大正14)年12月14日に勅令第323号として公布され、1942(昭和17)年11月1日に勅令第768号(行政簡素化実施ノ為ニスル警視庁官制外9勅令中改正道路管理職員制外15件廃止ノ件)によって廃止されるまで存在した。社会事業主事は、待遇職員であり、地方待遇職員令(大正9年8月11日勅令第248号)に拠っていた。当初この勅令は、道路管理職員制、地方土木職員制、地方産業職員制に依る職員に適用されたが、地方待遇職員令中改正ノ件(大正14年12月14日勅令第325号)によって、社会事業主事・主事補にも適用されることになった。つまり、小田直蔵は、ほぼ制度の創設から廃止まで在職していたことになる。意外なことに、こうした制度的裏づけや制度制定の経緯については、社会福祉史の分野でもあまりよく知られていない。 研究初年度の本年度は、こうした社会事業主事制度の詳細について明らかにすることを中心に研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地方社会事業職員制や待遇職員についての先行研究が意外に少なく、ほぼ一からそれらを明らかにしていく必要があった。 また社会事業主事についての人物研究は、いくつかの研究成果があったが、社会事業主事制度についての先行研究も皆無で、制度の解明に時間がかかった。 以上のような理由から兵庫県社会事業主事である小田直蔵の個別的な人物研究に取り組むタイミングが遅れている。 そのため第一年度に明らかにすべき点の解明が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二年度には、近代神戸において社会事業に顕著な貢献をした社会事業家について人物像を明らかにする予定である。ただし、それに先立って引き続き「地方社会事業職員制」「待遇職員」「社会事業主事」についてさらに詳細を明らかにする。それは兵庫県社会事業主事たる小田直蔵との比較研究を可能にするために、すでに先行研究のある人物(各地の社会事業主事)について詳細を把握しておくためである。 神戸における社会事業の展開においては、昭和戦前期に小田直蔵が大きな役割を果たしたことは間違いない。したがって引き続き小田の人物像を明らかにすることで、他の人物も関連して明確になっていくものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一年度に執筆し、投稿予定であった論文が未完成であった。そのため調査研究費(出張旅費等)と投稿経費(郵送代、抄録翻訳代、資料複写費等)が未消化であり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本学図書館には、近代社会事業史研究の基礎文献である『救済研究』『社会事業研究』『厚生事業研究』が所蔵されていない。そのため他大学等の図書館所蔵本を利用している。この資料は全72巻で単年度の補助金では購入しにくいが、2016年度に上記のような理由から次年度使用額が生じ、次年度配分の直接経費と合わせると購入可能となった。よって本資料を購入する計画である。
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