研究課題/領域番号 |
16K04233
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (40412126)
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研究分担者 |
笹倉 千佳弘 就実短期大学, 幼児教育学科, 教授 (60455045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 里親 / 里子 / 地域養護 / 公的養育者 / ホームスティ |
研究実績の概要 |
1.専門里親4名,元児童相談所長1名,地域養護活動(児童養護施設から離れた地域で,児童養護施設の職員や地域住民等が子どもとその地域ならではの暮らしを共に経験しながら、協働して子どもを養護する諸活動)を行っているNPO法人の理事に聞き取り調査を実施した.以下の2点について明らかになった. (1)里親養育は施設養育と比較すると,パーマネンシーであると言われるが,高齢の里親には,必ずしもそれが可能ではないことが現実味を帯びてくる.しかしパーマネンシーであると言われるがゆえに,自分が亡きあと,実子が里子との関係を負担に感じるようにならないかというような危惧が生じている. (2)現状では,地域養護活動を行う地域住民が里子のホームスティを受け入れようとしても,児童相談所の了解がなければ,里親は里子に地域養護活動の経験を提供することが困難である.いずれにせよ,里子の地域養護活動を実現するためには,まず里親と地域養護活動を行っている地域住民が「顔なじみ」になるような場を設ける必要がある.
2.児童相談所職員,児童養護施設職員,里親が共に学ぶ研修会の参与観察を行った.里親がこのような研修会に参加し,児童養護施設職員の実践に触れ,立場の違いを超えて意見交換を行うことは,里親に社会的養護の公的養育者としての自覚を高める機会となり,里親養育の閉鎖化を防ぐことになるであろう.しかし,現状では、公的養育者の自覚を十分に有していると思われる里親会の幹部が研修会に参加していた.この研修会に上記のような役割を担わせるのであれば,里親の参加層を広げることが課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.里親,地域養護活動を行っているNPO法人の理事に対する聞き取り調査を実施し,里親養育を困難に陥らせないためには,里親養育を開かれたものにする必要があることを確認した. 2.児童相談所職員,児童養護施設職員,里親が共に学ぶ研修会(岩手県児童養護施設協議会全体研修会)の参与観察を実施し,このような研修会が里親にとって公的養育者である自覚を高める機会になることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
1.里親養育支援の現状と課題については,①岩手県内の全児童養護施設を訪問し,施設長及び里親支援専門相談員に対してヒヤリングを行う.②公益社団法人家庭養護促進協会においてヒヤリングを行う.③専門里親に対するヒヤリングを継続して行う. 2.里子にとっての外集団との関わりの必要性については,社会的養護経験者の退所後の自立生活支援をコアとして活動している「あすからのくらし相談室・盛岡」においてヒヤリングを行う. 3.地域養護活動の実現に向けては,①岩手県児童養護施設協議会全体研修会の参与観察を行う.②西和賀町で実施される里親と地域住民の交流会の参与観察を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者、研究分担者ともに、児童養護施設職員、児童相談所職員、里親が共に学ぶ研修会に参加し、参与観察を行う予定であった。ところが、研究分担者は公務のため日程の調整がつかず、2017年2月の同研修会への参加は研究代表者のみとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研修会で児童相談所職員や児童養護施設職員と意見交換をすることができなかったため、2017年8月に調査地すべての児童養護施設を個別訪問し、調査を行う予定である。
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