研究課題/領域番号 |
16K04234
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
松田 美智子 天理大学, 人間学部, 教授 (90269746)
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研究分担者 |
南 彩子 天理大学, 人間学部, 教授 (90258187)
北垣 智基 大阪健康福祉短期大学, その他部局等, 講師 (60769842)
三田村 知子 関西女子短期大学, その他部局等, 助教 (70624964)
片山 千佳 羽衣国際大学, 人間生活学部, 講師 (60706985)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感情労働 / 共感疲労 / レジリエンス / ワークライフバランス / 支援ツール / 支援者支援 / 職場環境 / 人的サポート |
研究実績の概要 |
本研究の目的はストレスマネジメントの観点から、高齢者介護福祉分野で従事する相談員・介護職員などの離職防止に資するための支援ツールを開発・活用し支援者支援をすることである。 2015年に実施した予備的調査結果や関連する先行研究を参考に、共感疲労・レジリエンスの因子となる要因を明らかにするためのアンケート調査を2016年8月から9月に実施した。697名に調査票を配布し551部の調査票を回収(有効回収率79.1%)した。 設問項目(50問)について探索的因子分析を行い、共感疲労・レジリエンスを構成する因子が5項目づつ抽出された。共感疲労の因子は、精神的消耗感・援助者としての規範意識へのとらわれ・利用者との対応場面でのストレス・援助者としての感情管理・心身のストレス反応と命名した。レジリエンスの因子は、前向きな気持ちへの切りかえ・人的サポート・自己肯定感・職場のサポート・困難への対処法と命名した。それぞれの因子を基に各項目について6つの設問(計30問)を設定し、各自で1から5点の自己評価ポイントをつけ、共感疲労・レジリエンスの状況について自己チェックできるリストを作成した。 2017年度はこれまでの研究成果をふまえて、高齢者介護福祉分野で従事する相談員・介護職員など500名を対象に自己の共感疲労・レジリエンスの状況について自己覚知して頂くと共に、抽出した因子項目の精度について確認作業を進める。 また、2016年調査の自由記述(離職意向の有無・どんな時に辞めたいと思ったか・仕事をしていて楽しいと感じるのはどんな時か)について、カード分類法やテキストマイニングを活用した質的分析からストレス・レジリエンス要因を抽出し、ストレスを軽減しレジリエンスを高めるための支援ツールを開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年8月から9月に実施したアンケート調査の有効回収率は79.1%と高く、探索的因子分析から有意な共感疲労因子とレジリエンス因子が各5項目抽出された。それぞれの信頼性係数もかなり高い数値を示した。(共感疲労Cronbackのα=0.85・レジリエンス因子Cronbackのα=0.91)抽出された因子を基に共感疲労・レジリエンスについての自己チェックリストが作成できた。 2017年には予定通り500名の高齢者介護福祉領域で従事する相談員・介護職員を対象にこれまでの研究成果の公開と、援助者らの共感疲労・レジリエンスの状況を自己チェックし、2016年調査の因子分析結果の精度検証のための調査活動を行うための準備段階となっている。 また同調査の自由記述回答の質的分析を、カード分類法やテキストマイニングを用いて進め、援助者らのストレス・レジリエンス要因を明確化し、支援ツールの開発についても取り組んでいける目途がついた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年9月から、高齢者介護福祉領域で従事する相談員・介護職員ら500名(10施設・事業所予定)を対象に研修会を開催し、これまでの研究成果から明確になった援助者らのストレス要因・レジリエンス要因について公開・報告する。 併せて同研修会で、援助者らの現在の共感疲労やレジリエンスの状況について、本研究会で開発した自己チェックリストを活用して自己覚知して頂くと共に、これまでの研究成果として得られた共感疲労・レジリエンス要因の因子分析結果の精度についても検証するための調査協力を得る。 さらに、2016年調査の自由記述の質的分析を進め、離職防止のための支援ツールの開発に向けて取り組んでいく。 2017年第65回秋季社会福祉学会において、高齢者福祉施設における介護人材の共感疲労およびレジリエンスの構造(1)―量的データの因子分析結果より―、および、高齢者福祉施設における介護人材の共感疲労およびレジリエンスの構造(2)―自由記述結果の質的分析より―と題して研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査実施に伴う諸経費や、データ入力・統計処理に伴う諸経費が予算より安価であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実施予定である、高齢者介護福祉分野の介護人材の共感疲労及びレジリエンス尺度の検証調査では、検証精度を高めると共に具体的かつ実効性のある支援ツールを開発するために、調査対象者数を500名と見積もっている。 調査実施の方法を研修会方式とするため、1回あたりの調査協力者は30名~50名程度と見積もっており、調査実施に係る諸経費に充当する。また複数回の調査実施に伴い、収集したデータ整理や入力に際してアルバイトを採用する予定であり、その人件費に充当する。
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