研究課題/領域番号 |
16K04234
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
松田 美智子 天理大学, 人間学部, 教授 (90269746)
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研究分担者 |
南 彩子 天理大学, 人間学部, 教授 (90258187)
北垣 智基 大阪健康福祉短期大学, 介護福祉学科, 講師 (60769842)
三田村 知子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 講師 (70624964)
片山 千佳 羽衣国際大学, 人間生活学部, 講師 (60706985)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感情労働 / 共感疲労 / レジリエンス / 支援ツール / キャリアパス / ワークライフバランス / 職場環境 / 自己覚知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はストレスマネジメントの観点から、高齢者介護福祉分野で従事する相談員・介護職員・看護師などの対人援助職者の離職防止に資するための支援ツールを開発・活用し、支援者支援を充実させ、介護人材の離職を防止することである。 2016年度に実施したレジリエンス・共感疲労を構成する項目を抽出するためのアンケート調査結果を探索的因子分析によって得られたそれぞれ5項目について、各6つの設問を設定し、ライカート式5段階評価による「共感疲労・レジリエンスの自己チェックリスト」を作成した。自己チェックリストを活用することで、その時点での援助者の共感疲労度やレジリエンスの状況を客観的に把握することが可能となる。自らの状況を必要に応じて確認することで、共感疲労度を低減させたりレジリエンスを高める様な対処を早めにとることが可能になる。 2017年度には2016年度の調査結果の報告と、作成した自己チェックリストへの回答協力を求めた調査を実施した。600名の調査協力を得ることができた。回答から共感疲労・レジリエンスを構成するそれぞれの因子についての標準偏差を得た。また調査協力者へは高齢者介護福祉分野で従事する対人援助職者に固有の共感疲労やレジリエンスについて解説すると共に、共感疲労を低減しレジリエンスを強化するための対策についてもアドバイスし、次年度支援ツール作成時には協力者へ冊子としてお届けすることを約束した。 2018年2月には、調査協力に応じた社会福祉法人の代表者宛に各法人の調査結果と全体の傾向をグラフで示し、離職防止に資するための対策について研究会で協議した結果も付記し郵送した。訪問して職員に直接報告することを要望された法人には出向いて、職員・管理者を対象に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度に実施したアンケート調査の因子分析より抽出した共感疲労・レジリエンスについての自己チェックリストを活用して、2017年8月16日から2018年1月20日の期間に8法人・17事業所に所属する600名の調査協力者を対象に、自己チェックリスト作成のプロセス・研究成果の報告を行った上で、各自に共感疲労・レジリエンスの自己チェックをしてもらった。 自己チェックリストでは、因子分析から得られた共感疲労・レジリエンス各5項目についてそれぞれに6つの質問項目を設定、ライカート式5段階評価にてチェックを入れて頂き、600名の回答を基に標準偏差を得た。標準偏差を活用して自己のストレスやレジリエンス状況について適宜自己評価できるシートを作成し、調査協力を得た8法人に対し法人ごとの傾向と全体との比較について結果報告し、介護人材の離職防止に向けてのアドバイスを2018年2月に回答した。 2016年・2017年の調査結果を活用し、2018年度は支援ツールの開発を行う。研究活動はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度・2017年度に実施した調査結果を基に、支援ツール開発の具体的検討に入る。また「共感疲労・レジリエンス 自己チェックリスト」とその結果の見方についても充実させ、解説書を作成し、支援ツールと併せて活用することで、高齢者介護福祉分野で従事する対人援助職者のストレスを低減しレジリエンスを強化することによって離職防止に資することが可能になると考える。 2016年度に実施した調査で、仕事を辞めたいと思ったことの有無・仕事をしていて楽しいと感じる時・仕事をしていて辞めたいと思う時とその対処法・年齢・性別・職種・勤続年数別に調査結果を検討したところ、介護人材のキャリア形成や職務への支援体制の在り方について支援ツールへの活用が可能な所見が得られた。また高齢者介護福祉分野で従事する対人援助職者固有の課題も明確化され、更なる追加の実証的調査研究につなげていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査協力法人・事業所の所在地が比較的近距離であった。またデータ確認や入力に関する人件費が予定より低額であった。以上により使用差額が生じた。 2018年度に作成予定の支援ツールや共感疲労・レジリエンス自己チェックリストと活用の手引き作成に費用を充当させたい。 また「高齢者介護福祉分野で従事する対人援助者の共感疲労・レジリエンス評価尺度」の産業財産権申請に係る経費についても次年度使用予定である。
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