本年度は、前年度に実施したアンケート調査結果をもとに、地域包括支援センターの社会福祉士の実践内容をカテゴリー化し、住民の主体形成に関わる実践の位置づけ及び課題を明らかにした。その結果、社会福祉士の実践内容は「個別支援の姿勢と展開」「住民及び関係機関等との連携・協働」「住民主体の福祉活動の促進」「地域支援における関係機関等との連携・協働」の4つにカテゴリー化された。このうち住民の主体形成に関わる実践は、「住民主体の福祉活動の促進」として位置づけられたが、その取り組みは十分でなく、特に住民の主体形成につながる福祉課題の啓発や福祉教育の展開に課題があることが明らかとなった。また、本年度は2015年4月より制度化された地域ケア会議が、住民の主体形成を図る「場」の1つとして機能していると考え、地域包括支援センターが主催する地域ケア会議の実施状況に関するアンケート調査を実施した(回答者:社会福祉士)。その結果、地域づくりを検討する地域ケア会議を実施している地域包括支援センターは45.8%にとどまり、会議への住民組織・団体の参加率も68.4%となっていた。さらに、会議を実施している地域包括支援センターも、住民による見守りや支え合いの活動を具体化できておらず、改めて住民の主体形成を促す実践の難しさが明らかとなった。 本研究では、地域包括支援センターの社会福祉士に焦点を当て、住民の主体形成を図る実践について検討してきた。研究全体を通して、その実践においては、「住民との関係構築」「地域づくりに対する住民との合意形成」「他の機関・事業所との連携」を担保し、地域支援の実効性を高めることが重要になると明らかになった。また、その為には社会福祉士の配置体制の充実や地域支援を担う他職種との連携体制の構築が必要になると推察された。
|