研究課題/領域番号 |
16K04258
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上淵 寿 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20292998)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 愛着 / 内的作業モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,愛着(アタッチメント)の内的作業モデルを顕在的,潜在的の両側面から測定を行う。また,顕在的側面と潜在的側面が,それぞれ異なる情動制御に関与するという,二重モデルを検証することを大きな目的として掲げている。 本年度は,愛着の顕在的な側面に着目した。大学生を対象として,愛着の内的作業モデルを信頼性の高い自己報告尺度で測定した。この測定指標は友人との愛着と,母親との愛着を区別して測定するという特徴があった。それがキャリア自己効力を媒介として,大学生のキャリア探索行動に影響するという知見を得られた。 これは,欧米ではよく知られた知見だが,日本ではほとんど実証されていない結果を得ることができた。 この研究によって,キャリア形成において,幼少期からの母親や仲間との親密な関係が影響を及ぼしていることが示された。これは,重要な他者との親密な関係が,結果として,個人の安定的な行動目標やその目標に向けての自己効力を高めることに寄与していることに他ならない。キャリア関連の自己効力が高いことによって,キャリア探索行動が動機づけられたのは自然なことであろう。こうした知見から,幼少期からの親密な他者との愛着の安定性が,その後の人生の道を切り開く,すなわちキャリアを自ら探求し,道を切り開いていくのに役立っていることは,単純な適応だけはなく,愛着が人の生涯発達の多様化に大きな役割を果たしていることを裏付けるものとなっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
愛着の内的作業モデルの顕在的側面については,従来我が国では得られなかった知見を確証することができた。しかし,潜在的側面については,研究が十分進展しておらず,最終年度において,必要な研究を行い,新たな知見を得ることが望ましい。
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今後の研究の推進方策 |
愛着の内的作業モデルについて,先行研究ではGNATを使用して測定していた。これをそのまま使用するか,あるいは新たなIATを作成して測定するか,検討する余地がある。 それにもかかわらず,愛着の潜在的側面を測定した上で,潜在的情動制御との関係を実験的にみるため,新たに生理学的指標をとることを考えている。それによって,より潜在的情動制御の実態を明らかにすることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
潜在的情動制御と愛着との関係について,実験を行う必要がある。そのための実験参加者への謝礼,またデータ入力等のアルバイトへの謝礼,さらに研究結果の発表のための旅費として,助成金を使用する計画である。
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