研究実績の概要 |
本研究では,愛着(アタッチメント)の内的作業モデルを顕在的,潜在的の両側面から測定を行う。また,顕在的側面と潜在的側面が,それぞれ異なる情動制御に関与するという,二重モデルを検証することを大きな目的として掲げている。 本年度は,愛着の潜在的な側面に着目し,潜在的な指標間の関係について検討した。特に,潜在的な情動制御に対する潜在的な愛着の側面の影響を調べた。 実証研究は,大学生を対象として研究を行った。愛着の内的作業モデルをGNATという潜在的指標によって測定した(藤井他, 2015)。そして,自己の属性語を閾下提示した後に,愛着関連語を含む肯定反応語,すなわち有意味語を有意味と判断する反応時間を調べる語彙判断課題を実施した(Uebuchi, 2018)。 その結果,親密性回避傾向が高い人は,自己の属性語のプライムを提示されると,語彙判断課題の内,関係不安に関連する語彙への反応時間が遅くなる傾向があることが示された。この結果は,親密性回避傾向が高い人は,自己肯定のための確認をする傾向が高く,そのために関係不安が高められるという上方制御,すなわち負の情動を高める方向での情動制御を行っている可能性を,間接的に示している。 ゆえに,愛着の潜在的内的作業モデルから潜在的な負の情動の制御への影響について,その一部ではあるが,明らかにすることができた。これらの関係は,従来の研究ではまったく得られていない知見である。今後は,より多様な研究を行う必要がある。
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