研究課題/領域番号 |
16K04268
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
繁桝 江里 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (80410380)
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研究分担者 |
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会系心理学 / フィードバック / 上司-部下関係 / チーム / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、上司の日常的なフィードバック(FB)の活用促進を最終目標とし、一方的な一対一のコミュニケーションとしての枠組みを越え、相互作用性およびチーム性を踏まえた検討を目的とする。 平成29年度は「チーム性調査」として、上司および部下を対象とした調査を2つの企業の協力により実施した。FBの効果について、チームという単位に着目しチームパフォーマンスを主な指標として検討した結果、①対個人と対チームのFBの効果を比較すると、対個人の場合はポジティブなFBが個人のパフォーマンスを高めるが、対チームの場合はネガティブなFBがパフォーマンスを高める効果の方が強いこと、②対チームのネガティブなFBの効果は、部下の成長感や職務の明確性、上司の能力および人柄への信頼性、職務の厳しさが調整要因となること、③フィードバックの公正性が各指標を高めること、④上司のFB傾向について上司と部下の回答を比較すると、上司の回答によるFB傾向より部下に認識されたFB傾向の方が低いこと、が示された。 また、「チーム性実験」として、3名の実験参加者がチームで課題に取り組む実験を行った。実験参加者は、課題を解く2名の「メンバー」と、その2名の課題への取り組みを監督しパフォーマンスに対してネガティブなFBを行う「監督者」にランダムに割り当てられた。3名の間の報酬分配の公平性が、ネガティブなFBの評価に及ぼす影響を調べるために、役割間の報酬分配方式の3パターンを実験条件とした。監督者が受け取る報酬が相対的に大きい場合には、ネガティブなFBを行う行為が監督者の自己利益に根差したものと帰属され、メンバーからの監督者への信頼とFBの評価が下がるという仮説を立て、実験の結果は仮説を支持する方向であった。 以上の結果はFB効果をチームという単位で検討して初めて得られる知見であり、平成30年度に実施する研修に反映させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度実施の調査および実験の知見として、チームに対するフィードバックの効果、および、その効果を促進する条件を示すことができた。これに基づき、企業で実施する研修プログラムを作成する見通しが立っている。また、平成29年度実施の実験は、実験手続きの妥当性を検討することを目的とした予備実験という位置づけでもあったため、平成30年度に本実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研修については、企業に参加を依頼するため、研究協力者であるコンサルタントを通じて講演会などを行い、これまでの研究の知見を発表し理解を得ることを目指す。なお、平成29年度の調査実施の交渉の際に、上司と部下双方の参加が困難であることが企業から協力を得る際の阻害要因であることが分かっている。このため、研修への参加は上司のみとし、研修効果を測定するための事前および事後調査には上司と部下の双方に参加してもらうという計画に変更する予定である。また、実験については、観察者の役割を担う実験参加者のフィードバック方法について教示の仕方や、実験者のトレーニング方法などの手続き上の問題点を改良し、再度実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施した調査の協力企業は、参加者個人への謝礼を支払う代わりに、調査結果に基づいた研修を次年度に実施することを条件として、協力を得ることができた。このことから、個人への謝礼として計上した予算が執行されなかった。 その一方で、平成29年度に実施した実験は予備実験という位置づけでもあり改良の余地があることから、平成30年度に改めて実施する本実験の実験参加者への謝礼、および、実験者への謝礼のための予算が必要となったため、上記の未使用額をこれに充てることとした。
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