研究課題/領域番号 |
16K04273
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
小川 一美 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (70345875)
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研究分担者 |
木村 昌紀 神戸女学院大学, 人間科学部, 准教授 (30467500)
藤原 健 大阪経済大学, 人間科学部, 講師 (00707010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 対人コミュニケーション / 知識 / ノンバーバル |
研究実績の概要 |
本研究では,対人コミュニケーションに関する知識量を測定できる信頼性と妥当性を備えたテストを開発することが目的である。対人コミュニケーションに関する知識は,コミュニケーション行動の各過程に影響を及ぼすと考えられるものの,知識に着目した実証的研究は少なく,知識を測定するテストはほとんど開発されていない。 平成28年度は,対人コミュニケーションに関する実証的研究のレビューを行い,知見を整理した。社会心理学など心理学領域に限らず,関連領域の論文なども含め幅広く情報を収集しており,現在も継続中である。この作業は,Rosip & Hall(2004)による非言語的手がかりに関する知識量を測定するテストであるTONCKの作成過程を参考にし,テスト項目として採用できる知見を収集するためである。具体的には,研究論文データベースCiNii Articlesで,対人コミュニケーションに関連するキーワードによる検索を行い,実証的な研究論文の情報を収集している。なお,キーワードは研究代表者および分担者による協議に基づき決定した。しかし,単純にキーワード検索を行うとヒット数が14万件を超えることから,抽出方法の検討を繰り返しながら作業を進めている最中である。 また,対人コミュニケーションに関する知識量に関連する研究のレビューを行い,前述のRosip & Hall(2004)によるTONCKの他に,Schlegel & SchererによるGEMOK-Featuresという感情解読に関する知識テストも開発されていることなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は,「研究実績の概要」でも述べたようにテスト項目として採用できる知見を収集するために論文検索を行っているが,心理学以外の領域も含めて情報を収集しているために膨大な数の論文が抽出されることになり,作業に手間取っているためである。しかし,Rosip & Hall (2004)によるTONCK(非言語的手がかりに関する知識量テスト)のようにテスト項目を主観に依らず選定するためには,この作業は重要であると考えている。その一方で,GEMOK-Featuresの作成過程はボトムアップ的に項目を選定するのではなく,先行研究などに基づきトップダウン的に項目を選定していることから,テスト作成過程について,再度検討を行い,研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
1.ノンバーバルコミュニケーションに関する知識量テストの作成:対人コミュニケーション全般に関する知識量テストの一部として,ノンバーバルコミュニケーションに関する知識量テストをまずは作成する。平成29年度より研究代表者がTONCK(非言語的手がかりに関する知識量テスト)作成者の一人であるJudith, A. Hall氏の元へ在外研修に出かけており,Hall氏の協力を経て,TONCKをそのまま翻訳するのではなく項目の選定も含めて日本人用のテストを開発する。調査を繰り返し,信頼性と妥当性の保証されるテストを作成する。また,TONCKに関する研究知見と比較することで,日本人のノンバーバルコミュニケーションに関する知識の特徴を浮き彫りに出来ると考えている。 2.対人コミュニケーション全般に関する知識量テストの作成:1では網羅できない対人コミュニケーションの側面の知識について測定できるテストを開発する。 3.対人コミュニケーションに関する知識の特徴に関する実験的検討:対人コミュニケーションに関する知識が果たしてコミュニケーション行動に強く影響力を持っているのかということについては,実証的研究が少ない。そこで,知識の特徴を明らかにするため,TONCK,GEMOK-Featuresと解読行動の関係を実験により検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は予定よりも旅費と人件費・謝金の支出が少なかったため,次年度使用額が生じた。前述したように実証的研究知見の収集に時間がかかっているため,調査の実施まで進められなかったことで,支出する人件費および謝金も少なく,成果発表の旅費も使用しなかったことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は請求した助成金と次年度使用額として繰り越された額をあわせて執行するが,テスト開発に関する議論を研究代表者およびHall氏のいるアメリカで行う予定であるため,研究分担者が渡米する費用としての旅費が必要となる。また,調査を複数回実施することになるため,人件費および謝金が必要になる。さらに,知識と解読行動に関する実験を実施するため,謝金および物品費等も必要になる。そして,研究知見のさらなる収集と,いくつかの成果も得られることが予測できることから,学会への参加も予定している。
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