研究課題/領域番号 |
16K04275
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山浦 一保 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (80405141)
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研究分担者 |
大坪 庸介 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (80322775)
河野 達仁 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00344713)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 信頼関係の崩壊 / 対人葛藤 / 上司と部下 / 和解 / 経営理念 / 地位獲得戦略 / 妬み感情 |
研究実績の概要 |
H28年度は、いったん悪化および崩壊した関係性の再構築を促す条件について、以下の3つの視点から検討を行った。 1. 組織における信頼関係の再構築に及ぼす「組織環境の要因」の観点からの分析:社員間(上司と部下、他部署の社員と)の関係構築に、組織・チームの環境の要因が及ぼす影響について検討した。経営哲学・理念やそれを浸透させるためのチーム活動は、互いの心理的距離を縮めると同時に、自発的な行動を促す上で重要な役割を果たすことが示唆された。また、この職場環境の要因は、将来像の一致(組織と自己の関わり意識)、あるいは仕事の楽しさ(仕事と自己の関わり)といった心理的要因を媒介して、利他的行動と創造的行動を促すことが明らかになった。 2.組織における信頼関係の再構築(和解)に及ぼす「個人要因」の観点からの分析:組織内での葛藤解決に対する地位獲得戦略の影響について検討を行った。地位獲得戦略に関する研究では、攻撃的で威圧的な戦略(支配的戦略)と利他的に振る舞い尊敬を獲得する戦略(信望戦略)の2通りの戦略があり、多くの場合支配的戦略は有効ではないことが知られている。H28年度の研究では、回答者がいずれの戦略を使う傾向があるかを尋ねるとともに、実際の職場での葛藤後に和解を達成しているかどうかを調査した。その結果、信望戦略を使う者ほど和解を達成していることが示された。 3.リーダーとの信頼関係の悪化に伴い、「他成員に対して生じるネガティブ感情」の観点からの分析:リーダーとの関係が悪化すると、他成員に対して妬みの感情が生じ、組織の諸活動を阻害することが報告されている。そこで、この妬み感情を緩和させる有効なマネジメントのあり方について、実験的な手法を用いて検討した。その結果、妬みを抱く者に役割を付与することが有効であり、その効果は、組織の目標設定によって促進されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、とくに大きな問題はなく、おおむね順調に調査・実験等が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後進めるべき研究とその推進方策については、以下の3点である。 1.上記(研究実績)の内容を早期に論文化し、解決すべき、かつ優先順位の高い課題を明確にすること。 2.当事者(上司と部下)の関係修復・和解に有効な条件について、第三者や組織によるマネジメントのあり方、および当事者の感情的側面を含めて検討を重ねる必要がある。 3.因果関係の不明瞭さについては、実験的手法や縦断的研究などを用いた研究計画と現場協力を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の末にノートパソコンが不調になり、その購入に関して、事務処理と確認のタイミングとの齟齬・誤認により、2台分の発注になった(その後、1台の購入で十分であると判断し、年度内に1台分をキャンセルした)ことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
調査・実験の充実化を図るため、その研究費用および研究会開催等に充当する予定である。
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