研究課題/領域番号 |
16K04282
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池田 浩 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (80454700)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | フォロワーシップ / サーバント・リーダーシップ / 現場介入 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、集団過程においてほとんど看過されてきた「フォロワーシップ」の概念を明確化すると共に、その生起要因ならびに集団やチームにもたらす効果を理論的かつ実証的に明らかにすることであった。2018年度は、企業の協力を得られたことから、当初2019年度に予定していたフォロワーシップを引き出すための現場介入に関する研究を予定を繰り上げて行った。 過去2年間による研究成果から、フォロワーシップには、積極的にリーダーを支援する機能と、フォロワー自身が自らの考えや信念を持ちそれに基づいて行動する主体性機能から構成されることを明らかにしてきた。もちろん、それらの2つの機能は、フォロワー自身の個人特性に寄るところもあるが、やはりそれを引き出す主な要因はリーダーシップであることを特定した。以上から、今年度は、フォロワーシップを引き出すリーダーシップ・スタイルの検討を行い、下記のことを明らかにした。 第1に、大学生を対象とした調査から、垂直的(トップダウン)およびサーバント・リーダーシップいずれも、フォロワーの積極的関与と関連性があることを明らかにした。しかし、フォロワーの独自の考えとはサーバント・リーダーシップとのみ関連性が見られた。これらの結果は、フォロワーをエンパワーし、主体性を引き出すためには、リーダー主導ではなく、フォロワー中心的なリーダーシップであることを示唆していた。 第2に、全国に8つの事業所を要する企業の協力を得て、リーダーシップ介入の研究を行った。具体的には、2つの事業所の10名のリーダーを対象に、サーバント・リーダーシップに関わる研修を実施した。そして、その研修の前後1ヶ月に事前調査と事後調査を実施し、介入の効果を検証した。その結果、フォロワーの意欲や心理には明確な効果は認められず、唯一、リーダーの達成への意欲のみに肯定的な変化が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、企業の協力を得たことで、2019年度に予定していた研究を前倒しして行った。通常、こうした協力を得ることは難しいものの、リーダーシップ介入を行ううえで、現場での制約などあり、十分な検証を行えたとは言い難い。しかし、フォロワーシップを引き出すためのサーバント・リーダーシップの育成開発については貴重な理論的示唆を得たと言えるだろう。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度のリーダーシップ介入の研究成果をもとに、フォロワーシップを生起させる要因を明らかにする。具体的には、第1に、フォロワーシップを引き出す「リーダーシップ・スタイル」に関する実験的検討を行う。既に、調査研究によってトップダウン的リーダーよりも、メンバーを支援するサーバント・リーダーの下でよりフォロワーシップは発揮されることを明らかにした。現場介入では十分な成果は得られなかったものの、実験室実験を通じて、リーダーシップを操作することで、因果関係を明確にする。 第2は、フォロワーシップの生起要因に関する調査研究を行う。特に,本研究では特性賦活理論(trait activation theory;Mischel, 1977)の枠組みに基づいて検討する。この理論は、パーソナリティ特性がフォロワーシップとして発現するかは「状況の強さ」に依存することを主張するものである。それを適用することで、フォロワーシップの生起要因がパーソナリティなどの「個人特性」か、あるいは職場特性などの「状況要因」か、またその相互作用によるものかを調査によって検討する。
|