本研究の目的は、集団過程においてほとんど看過されてきた「フォロワーシップ」の概念を明確化すると共に、その生起要因ならびに集団やチームにもたらす効果を理論的かつ実証的に明らかにすることであった。これまでの研究成果から、能動的なフォロワーシップを引き出すうえで、上司によるサーバント・リーダーシップが有効であることが示されてきた。しかし、サーバント・リーダーシップのどのような働きかけがフォロワーシップを引き出すかについて十分に明確になっていない。 2019年度は、運輸業の企業組織のリーダーを対象に、サーバント・リーダーシップとあわせて、フォロワーへの感謝の表明が、部下のフォロワーシップに与える影響について質問紙調査によって検討した。中間管理職136名に調査を実施した結果、リーダーのサーバント・リーダーシップに加えて、リーダーによる感謝の伝達は、メンバーの能力伸長のみならず、フォロワーシップと近接するプロアクティブ行動(先取り行動)を促進させていた。この結果は、リーダーが単に奉仕や支援を行うだけではなく、フォロワーの活動や成果に対して、それを労い謝意を伝達することで、フォロワーはそれを受容してさらにリーダーに対して積極的にフォロワーシップを発揮するようになることを示唆するものである。ただし、本調査は、中間管理職のリーダーのみを対象としたものであるため、この知見をさらに頑健なものとして示していくためにはさらなる検証が必要であると言える。
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