研究課題/領域番号 |
16K04284
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 岩手大学, 教育学部, 教授 (60305258)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | いじめ認知 / いじめ深刻指数 / うつ / 客観的評価基準 |
研究実績の概要 |
平成28年度、大学生を対象として行った、「いじめ認知」に関する予備調査結果を参考に、平成29年度は、小学生(4~6年)計543名を対象に、「いじめ認知尺度」の開発に取り組んだ。 まず、小学生が「いじめ」と認知する可能性のある45個のスクールライフイベントを選定し、それぞれの出来事に対する「いじめ深刻得点」(精神的苦痛度と傷つき度の合算値、いずれも5段階評定)を求めた。次に、それら45個の「いじめ深刻得点」の平均値及び標準偏差を用いて、各スクールライフイベントの「いじめ深刻得点」を偏差値に換算することによって「いじめ深刻指数」(略してBQ)を算出した。次に、過去1か月以内に各個人が経験したスクールライフイベントそれぞれに付与されているBQを単純に合算した値とSDSによって測定された「うつ得点」との関係について回帰分析を行ったところ、y=2.55χ+164.31(χ:うつ得点、y:BQ)という回帰式を得た。この式にうつ得点のカットオフポイントである16点を代入したところ、205点というBQのカットオフポイントが得られた。つまり、過去1か月以内に経験したスクールライフイベントそれぞれに付与されているBQを合算した値が205点を超えると、現在、その子は、いじめによって深刻な精神的ダメージを受けている可能性が高いと判断される。 今後、さらに、同様の手続によって、中学生、高校生にも対象を拡げ、各発達段階ごとに「被害者判断」でもあり「加害者判断」でもある客観的な「いじめ判定基準」を策定し、全国の学校で共通に活用できる「いじめ認知尺度」を開発し、各自治体による「いじめ認知」のバラツキを解消したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度中に、小学校、中学校、高校すべてにおいて「いじめ認知」及び「いじめ経験」に関する本調査を終了し、発達段階別に客観的な「いじめ判定基準」を策定することを目標としていたことからすると、概ね順調に進んでいると言える。ただ、「いじめ認知」及び「いじめ経験」に関する調査については子どもへの影響を考え学校側で拒否される可能性も今後あることから、中学校及び高校においても同様に分析に必要なデータ数を早めに集め、発達段階に応じた「いじめ認知尺度」の開発を完了させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に終了した、小学校における「いじめ認知」および「いじめ経験」に関する調査に引き続き、中学校および高校においても同様の調査を実施する。そして、小学校、中学校、高校のデータをあわせて分析を行い、発達段階ごとに客観的な「いじめ判定基準」を策定するとともに、「児童生徒版いじめ認知尺度」の信頼性、妥当性を検討する。 併せて、先行研究や現職の学校教員に対するインタビュー調査結果なども参考にしながら、もう一方の本研究における柱である「児童生徒のいじめ防止能力」をどのように評価していけばよいか、まずは「いじめ防止能力」の下位構造および尺度に含めるべき項目について検討した上で尺度を構成し、その尺度を実際に児童生徒に対して実施することにより、項目の精選および尺度の信頼性、妥当性の検討を行い、学校における「いじめ防止教育」で活用できる「児童生徒版いじめ防止能力」の開発を行っていきたいと考えている。そして、最終的には、どういった「いじめ防止能力」を学校現場で高めていくことができれば「いじめ認知件数」を減らすことができるのかについて明らかにしていきたい。なお、データ収集に当たっては、「いじめ」に関する調査に対して神経質になっている学校も多いことから、本研究の趣旨及び調査手続きについて十分に校長、担任をはじめとする教職員、保護者に説明し同意を得た上で実施するとともに、倫理的配慮も十分行いながら慎重に調査を実施していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定しておりました謝金を使用しなかったため残金が発生しております。しかしながら、今後、引き続き、「いじめ」に関する大規模調査を実施することが予定されており、今後、その調査に係る費用が当初の予定金額よりも多く発生する見込みです。従って、残高は、当初の予定金額よりも多く発生する見込みである「いじめ調査」実施に伴う費用に充てる予定です。
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