研究課題/領域番号 |
16K04284
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 岩手大学, 教育学部, 教授 (60305258)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | いじめ認知尺度 / いじめ深刻指数 / いじめ認知得点 / いじめ認知件数 |
研究実績の概要 |
平成29年度の小学校調査に引き続き、平成30年度は、中学校調査及び高校調査を実施し、中学校、高校ごとに「いじめ認知尺度」を開発し、「被害者判断」でもあり「加害者判断」でもある客観的な「いじめ判定基準」を算出した。 まず、中学生(1~3年)計318名(男子179名、女子139名)を対象に、小学校調査と同様の「いじめ認知尺度」を実施したところ、主因子法・プロマックス回転による因子分析の結果、「精神的攻撃」、「身体的・物理的攻撃」、「人権侵害」という3つの因子が抽出された。また、小学校調査と同様の手続きにより客観的な「いじめ判定基準」の指標となる「いじめ深刻指数」を算出したところ、中学生にとって「いじめ深刻指数」が最も高かった出来事は、「クラスで仲間外れにされた」(指数=70)であった。さらに、過去1か月以内に経験した出来事それぞれに付与されている「いじめ深刻指数」を単純に合算した値を「いじめ認知得点」として、二要因分散分析(性×学年)を行ったところ、「いじめ認知尺度」のすべての下位尺度および全体得点において中学1年生の方が中学3年生に比べて有意に得点の高いことが明らかになった。この傾向は、文科省が毎年報告してしている「いじめ認知件数」の傾向と一致していることから、本尺度には一定の妥当性が存在していると考えられる。 次に,高校生(1~3年)計201名(男子96名、女子105名)を対象に、中学生調査と同様の「いじめ認知尺度」を実施したところ、主因子法・プロマックス回転による因子分析の結果、「精神的攻撃」、「集団的攻撃」、「物的攻撃」、「身体的攻撃」という4つの因子が抽出された。また、中学生調査と同様の手続きにより算出された「いじめ深刻指数」が高かった出来事は、「友達に自分が大切にしている物を盗まれた」(指数=72)、「クラスで仲間外れにされた」(指数=70)などが挙げられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度中に「いじめ認知」に関する国際調査を実施し、国際調査用紙の回収を完了したいと考えていた。しかしながら、国際調査を実施するフィンランドのコーデイネーターから、フィンランドでは、現在、「いじめ」に関する調査が全国規模で多数行われていることにより、現地でなかなか調査に協力してくださる学校が見つからないとの連絡をいただいた。そこで、調査期間を当初の予定より延長する形で、現在、調査協力校を探している段階で、目標データ数の約半分が集まったところである。従って、本研究の進捗状況はやや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度までで、「被害者判断」でもあり「第三者判断」でもある客観的な「いじめ認定」を可能にする「いじめ認知尺度」の小学生版、中学生版、高校生版の開発は完了した。そこで、平成31年度からは、発達段階ごとではなく、小学校、中学校、高校で共通に実施活用できる「児童生徒版いじめ認知尺度」を開発し、その尺度を用いて国際比較調査を実施し、国際的な視点から「いじめ」の現状把握及び尺度の標準化を試みたいと考えている。さらに、本研究のもう1つの柱である「いじめ防止能力」の評価を行うことができる尺度を開発し、児童生徒の「いじめ防止能力」の現状及び育成の方法、「いじめ防止能力」と「いじめ経験」との関連性などについて検討していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際調査に御協力いただける学校が当初の目標の通りへ集まらなかった等の理由により、国際調査実施及び調査用紙回収が遅れていることから国際調査実施に係る費用を次年度に繰り越すことにした。従って、次年度使用額が生じた。
|