研究課題/領域番号 |
16K04284
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 岩手大学, 教育学部, 教授 (60305258)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | いじめ防止能力 / いじめ認知 / 学校適応感 / 規範意識 / 協調性 / アサーション力 / 感情制御能力 |
研究実績の概要 |
公立小学校の児童(小4~小6)計292名(男子157名、女子135名)を対象にして、平成29年度および平成30年度を通して研究代表者が開発した「いじめ認知尺度」、教師を対象に実施した予備調査結果に基づいて作成した「いじめ防止能力尺度」(暫定版)、栗原ら(2010)が開発した「学校適応感尺度」を実施した。そして、「いじめ防止能力尺度」(暫定版)35項目について、主因子法・プロマックス回転による因子分析を行ったところ、最終的に、「いじめ防止能力」は、「規範意識」、「協調性」、「アサーション力」、「感情制御能力」という4因子で構成されていることが明らかになった。 次に、「いじめ防止能力」の性差および学年差を検討するために、「いじめ防止能力」について二要因分散分析(性×学年)を行ったところ、全体得点においては有意な性差および学年差は認められなかった。一方で、下位尺度ごとに見ると、「規範意識」において有意な性差(女子>男子)、「アサーション力」においてTukeyの多重比較の結果、有意な学年差(6年生>4,5年生)が確認された。 さらに、「いじめ防止能力」と「学校適応感」との関連性について検討するために、「学校適応感尺度」の各下位尺度得点を説明変数、「いじめ防止能力尺度」によって算出された「いじめ防止能力得点」を目的変数として、男女別にパス解析を行った。その結果、男女とも、パス係数の値から、特に「向社会的スキル」を向上させることが全体的に「いじめ防止能力」を高めることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては、日本の児童生徒だけでなく、いじめ防止先進国である北欧諸国の児童生徒も対象にして調査を実施することにしていた。しかしながら、子どもの人権を守る意味から、北欧諸国では子どもたちに対する調査を制限する傾向が強くなり、なかなか国際調査実施協力校を探すのが困難であった。そのため、調査実施および調査用紙回収に手間取り、当初予定していた計画よりやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度から令和元年度までかけて開発した「いじめ認知尺度」および「いじめ防止能力尺度」を日本だけでなく「いじめ防止先進国」であるフィンランドの児童生徒(小4~中3)にも実施し、「いじめ認知」と「いじめ防止能力」に関する国際比較を行う。その国際比較を通して、国際的な視点から、我が国における「いじめ」の特徴、「いじめ防止能力」の現状と対策について検討する。そして、最終的には、今後、児童生徒の「いじめ防止能力」を高めていくためには、どういった能力向上に焦点を合わせた「いじめ防止教育」を今後展開していけばよいのか、国際的視点から明らかにしていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度、フィンランドにおける「いじめ認知」および「いじめ防止能力」に関する国際調査を実施し、結果の集計、データ分析、報告書の作成まで一連の作業を行う予定であった。しかしながら、フィンランドにおいて子どもの人権を守る意味から、子どもに対して調査を実施することに対して拒否的な学校が多く、予想以上に調査対象校を見つけるのに苦労し、結果的に研究計画よりかなり遅れる形でようやく12月になって予定していた人数分のデータを回収することができた。このように、フィンランドにおける調査回収に手間取ったことにより、来年度、国際比較調査データ分析に入ることになる。そこで、今年度生じた次年度使用額は、この国際比較調査データ分析を行うために必要な費用ということで計画している。
|